研究課題/領域番号 |
23560274
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
阿部 晶 旭川工業高等専門学校, システム制御情報工学科, 教授 (30313729)
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キーワード | フレキシブルマニピュレータ / 運動制御 / 振動制御 / 省エネルギー |
研究概要 |
今年度は柔軟ベースに搭載された剛体ロボットアームの省エネルギー軌道計画に関する研究を試みた.具体的には,柔軟ベースの先端に搭載された剛体アームのPTP制御問題を扱い,柔軟ベースの残留振動が抑制されるアームの省エネルギー軌道計画を実施した.ここで,アームの軌道をニューラルネットワークで生成させる.次いで,残留振動と駆動エネルギーが最小となるよう多目的遺伝的アルゴリズムを適用し,ニューラルネットワークをチューニングさせて最適軌道を求めた.この手法で生成された軌道を用いてアームを旋回させると,省エネルギーで残留振動の抑制が実現できる.すなわち,提案手法はフィードフォワード制御に属する. 数値シミュレーションから,駆動エネルギー最小化と残留振動抑制の間にトレードオフの関係があることを明らかにした.また,残留振動抑制軌道の駆動エネルギーが剛体アームの初期角度に大きく依存していることも判明した.さらにモデル実験を実施し,提案された軌道計画法の妥当性を検証した.ここで,サイクロイド曲線軌道との比較から,本手法は残留振動抑制に有効であることを示した. また,この柔軟ベース上の剛体アームの実験装置を用いて,剛体アームのより少ない駆動エネルギーで柔軟ベースに大きな運動を発生させることにも取り組んだ.手法は上記と同様にニューラルネットワークで剛体アームの関節角軌道を生成させ,最適化手法を用いて振動を発生させる軌道を探索した.数値シミュレーションから,剛体アームの駆動条件が同一でもサイクロイド曲線軌道より本手法の方がより少ない駆動エネルギーで振動を発生させることに成功した. これより,省エネルギー化目指した劣駆動マニピュレータに対する知見を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,省エネルギー化を目的としたフレキシブルリンクから構成される劣駆動マニピュレータのPoint-To-Point (PTP) 制御法の確立を目指すものである.ここで,リンクの柔軟性を活用してより少ないエネルギーでマニピュレータに運動を発生させ,位置決め後には残留振動が抑制される仕組みに取り組んでいる.フレキシブルリンクから構成される柔軟ベース上の剛体アームのモデルを用い,剛体アームのより少ないエネルギーでリンクに大きな振動を発生させることに成功した.しかしながら,今年度に開発した実験装置においては,剛体アームを駆動するサーボモータのケーブル等からの外乱が存在し,モデル実験ではその実現性が検証されていない.この点に達成度において遅れが生じているといえる.一方,位置決め後の残留抑制に関しては充分な省エネルギーが図られていることがシミュレーションならびにモデル実験から証明されている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては,今年度の開発した実験装置の改良を実施する.次いで,第1リンクが柔軟リンクの自由関節,第2リンクが剛体リンクの駆動関節で構成される柔軟劣駆動マニピュレータのPTP制御問題に対して,新たなフィードフォワード制御法の提案を試みる.ここで,自由関節の角度制御と位置決め後の振動が抑制される手法を模索し,提案手法の有効性を数値シミュレーションならびにモデル実験から検証する.また,この手法のロバスト性の妥当性も検討する.そして,ここで得られた知見を基にし,フレキシブルマニピュレータならではの省エネルギー化が飛躍的に図られる可能性を探り,その力学原理の解明を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費はモデル実験装置の部品・材料費に使用する.また,効果的に研究を進める上で,実験装置の製作および実証実験の遂行には実験補助者が必要であり,このために人件費・謝金を使用する.また,今年度ならびに次年度で得られた知見の研究成果発表のために国内外の学会等に参加する予定である.これを旅費として使用する.
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