研究課題/領域番号 |
23560277
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研究機関 | 北九州工業高等専門学校 |
研究代表者 |
久池井 茂 北九州工業高等専門学校, 制御情報工学科, 准教授 (50300653)
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研究分担者 |
吉野 慶一 北九州工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (40249876)
川原 浩治 北九州工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (20321515)
滝本 隆 北九州工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (60581220)
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キーワード | 生体細胞 / 非接触 / 運動制御 / レーザー / ツイザー / 超微粒子 / 細胞機能 / ナノバイオフォトニクス |
研究概要 |
平成23年度までに研究開発した「回転不変マッチング(RIM)システム」と「機能分析システム」の二つのシステムを統合化を行った。構築したシステムでは,2本のレーザー光を用いるので,それぞれのレーザーが独立して動く必要がある。したがって,ステージではなく対物レンズを制御した。そのため,対物レンズを制御するための回転ステージを設置し調整を行った。そして,これまでの研究開発で実施してきた非接触運動制御技術を活用して,培地内で細胞の3次元操作や回転運動の最適操作条件を調べた。 また,従来の細胞の機能分析では細胞を破壊しなければならず,測定時間もかかってしまうため,研究者にとって多大な負担となっていた。本研究では,これらの課題を解決するために,細胞内の機能分析をリアルタイムで計測処理するためのシステム開発を行い,細胞の画像から抗体量を測定する細胞機能分析の方法を検証した。 これまでの研究では,細胞が生産するIgM抗体は染色細胞の外にも分泌するため,細胞内の抗体量が一定ではないという問題点があった。したがって,それを蛍光標識抗体で認識しても誤差が大きすぎ,誤差が誤差を生み相関関係が得られなかった。そこで,今年度は細胞が生産するDs-Redという蛍光物質に着目した。Ds-Red生産細胞を利用すれば,細胞を破砕せず,かつ染色の必要がなくなるという利点がある。また、細胞の中に蛍光がとどまるので生産量がある程度一定であると考えられ,機能分析と画像処理結果との相関を調べれば,細胞機能分析システムへ適用できることを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に研究開発した「回転不変マッチング(RIM)システム」と「機能分析システム」の統合を行い,平成25年度の実証実験に向けての準備が進んでいるため。 細胞の姿勢(回転等)により形状が変化することを防ぐために,対象の回転によってパラメータ変動が生じない,重心点からの等距離エッジ強度を使用して照合を行った。回転量に対して不変なパラメータであるため,回転のための処理を必要とせず,高精度で処理時間を短縮できるようになった。 そして,システム全体の調整を行った結果,抗体の染色画像を取得してきたときに発生していた,カバーガラスの反射の影響を受けることなく,より高速・高精度で細胞の三次元画像を作製できるようになった。 以上より,画像処理を用いた細胞の機器分析技術の信頼性が増し,バイオテクノロジーにおけるレーザー光圧力を用いた生体細胞の非接触運動制御法が確立できつつあり,研究の目的で記載した平成24年度の目標をほぼ達成したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,実用化に向けて実証実験を実施する。最適操作条件の評価とアプリケーションの開発についても検討する。ナノテクノロジー,バイオテクノロジー,フォトニクスという3つの分野の融合技術により,分子レベルの計測,制御を可能とする新しい非接触運動制御手法の提案を行う予定である。 予想される成果として,集団の細胞を顕微鏡観察のみで機能解析し,非接触運動制御技術と組み合わせて,目的の細胞のみを分収することが可能となる。 そして,ロボット制御技術を活用してシステムの自動化やアプリケーション開発を行い,本校細胞工学センターと密に連携し,現場からの意見をシステムの研究開発にフィードバックし,安定した事業化も視野に入れ産業社会への大きな貢献を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は実証実験を行うので,研究現場のニーズに対応する装置改良のための材料費購入を予定している。実証実験でのデータを分析し,本研究の研究成果を社会・国民に発信するために,国内,国外での学会にて研究成果を発表する予定であり,それに伴う旅費等を申請する。 また,実験や解析に,専門家の知識,資料提供や閲覧,補助要員が必要であり,その経費を謝金として申請する。平成25年度は研究成果のまとめとして,論文投稿,研究成果報告を重視するため,研究成果投稿料や印刷費を使用計画として挙げている。
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