研究課題/領域番号 |
23560283
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
尾田 雅文 新潟大学, 産学地域連携推進機構, 教授 (80372473)
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研究分担者 |
須田 剛士 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (10361916)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / ハイドロダイナミック遺伝子導入法 |
研究概要 |
1)注入局所脈管内圧プロファイル制御装置の改良 肝臓を対象としたHGD法における理想的な加圧プロファイルは、マウスにおいて確立されている尾静脈からのHGD時に肝臓で生成される加圧プロファイルに類似したものと推測した。したがって制御装置には、局所注入の対象領域のボリュームが不明で、かつ予測不能の注入溶液量が対象領域から漏出するという条件下であっても、全身的なHGD時に生成される圧力プロファイルを注入局所に再現可能であることが要求される。これまでの試作機は、カテーテル内に挿入された圧力センサからの出力値に基づき、制御回路により電動アクチュエータを的確に駆動し、臨床使用される耐圧シリンジ、既存の耐圧チューブ等を介して局所注入を実現している。本年度は、体重60kgの1%に相当する600mlを許容最大注入量と仮定し、臨床応用を鑑みて大型動物に対応可能な150ml耐圧シリンジ4本を用いる装置に改良した。2)注入部形態計測装置の試作と3次元力学的シミュレーション 超音波映像装置により、注入対象となる臓器を非侵襲で形態計測可能な環境を構築した。さらに、本装置を用いた外部からの圧迫荷重に対する変形挙動観察の他に、注入部位組織切片を力学的評価を目指した。すなわち,血管を含む3次元モデリングを行い、これに前出の圧迫荷重が作用した際の変形挙動監察結果と数値シミュレーション結果を比較し、解析モデルの妥当性を評価する環境を構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初において,震災の影響により,研究費執行が計画通りに行うことが困難であったことから,超音波映像装置と3次元磁気センサから構成される3次元超音波スキャナーの構築を次年度に行うこととした. このため,「注入部形態計測装置の試作と3次元力学的シミュレーション」については,超音波映像装置単独で可能な範囲の組織形状観察とモデリングならび解析の環境整備を図ることとした. 一方,「注入局所脈管内圧プロファイル制御装置の改良」については,当初予定以上の進展を図り,具体的には,臨床応用を目指した大型動物に対応可能な150ml耐圧シリンジ4本を用いる装置への改良のみならず,一部,実験実施に着手した.
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今後の研究の推進方策 |
1)圧力履歴の再現性評価 HGD原法は用手的な急速静注を適用しており、その結果、定量注入である。これに対し高圧ガスをエネルギー源とした定圧注入によるHGDでは、当然のことながら異なる圧力履歴が生成される。いかなる内圧プロファイルが局所的なHGDにおいて対容量的に導入効率の点で優れているのかを明らかにするために、改良する導入システムを用いて、両者の圧力履歴の再現し、ブタ等を対象として生理食塩水で希釈されたヨード造影剤を注入し、透視下に溶液の広がりに関して画像学的な評価を行なうとともに、注入溶液量、心電図、血圧、呼吸数、動脈血酸素飽和度を連続的に監視し、数値シミュレーションと併せて評価する。2)最適な圧力履歴の検討 肝臓は肝静脈と門脈という2系統の独立した低圧系を有しており、豊富な脈管間交通と相俟って、注入溶液が容易に対象領域外へ漏出する。一方、肝静脈、下大静脈と門脈を一時的であっても同時に閉塞した場合、全身循環動態に与える影響は無視し得ない。下大静脈への漏出は、注入カテーテルおよびバルーンの閉塞位置が移動と、静脈径の拡大による閉塞効果の減少が推察される。よって、注入初期から急速注入を行うことは不利と考えられるため、同図中に示す複数のシグモイド波形内圧プロファイルに関して、注入溶液量と全身循環動態への影響を評価し、数値シミュレーションと併せて、必要な内圧上昇を得るのに最も循環動態への影響が少ない圧力履歴を選別・検討し、導入システムの最適制御パラメータの導出手法を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度購入した超音波映像装置に加え,3次元磁気センサを早急に入手し,両者から構成される3次元超音波スキャナーを構築し、注入対象となる臓器を非侵襲で形態計測可能な環境を構築する。さらに、本装置を用いた外部からの圧迫荷重に対する変形挙動観察の他に、注入部位組織切片を力学的に評価する。血管を含む3次元モデリングを行い、これに前出の圧迫荷重が作用した際の変形挙動監察結果と数値シミュレーション結果を比較し、解析モデルの妥当性を評価する。続いて、前述の装置により注入された際の臓器の損傷程度を評価するとともに、モデルを用いた解析結果を比較検討することで、生体への負荷が最小かつ効果が最大となる注入速度を求める。脈管内圧力を再現するよう、ポンプ注入速度を階段状に上昇させることが必要である。この間、注入速度、注入溶液量、脈管内圧をモニターし、圧力補正に要する制御パラメータの各定数を設定するために、注入速度と圧力変化の関係を予測可能な数値シミュレーション環境を構築する。
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