本研究は,これまで直接計測することのできなかったジャークを,世界で初めて直接計測可能にした新しいセンサの高感度化を実現し,さらにそのセンサの応用を目指した.特に残留振動が問題となる柔軟構造を有する搬送体への新しいフィードバック振動制御法の実現を目的とした.最終年度の平成25年度は柔軟構造を介して制振対象を保持する位置決め装置の製作を完成し,変位センサと開発したプロトタイプセンサおよび開発したセンサと同構造の加速度センサを用いて,フィードバック制御系を構築した.フィードバック信号にどの物理量を採用するのがよいのかを検討した.その結果,柔軟構造であっても対象物の振動を励起しないで高速位置決めが可能な制御システムを実現するためには.テーブルの位置計測と柔軟構造体のジャークおよび加速度の計測を併用することが柔軟構造体を有する位置決めテーブルを制御する場合に極めて有効であるという,工学的に新しい知見を得た. 研究期間全体を通じて,従来にない新しい高感度なジャークセンサを開発し,単純な位置決めテーブルに対するジャークフィードバックの効果,通常では制振の難しい柔軟構造物を搭載する場合の搬送テーブルの追従制御と柔軟構造体の制振の同時実現を検討し,ジャークフィードバックの効果を検討した.その結果,加速度とジャークの併用が有効であるという,制振技術分野に有効な知見を明らかにした,また開発したジャークセンサの応用として,有効な振動検出が困難な,極低速で回転する場合の転がり軸受の損傷診断への適用を検討した.さらにその低速回転時の異常振動検出時のジャークセンサ出力の特徴に順応させた新しい診断処理アルゴリズムを開発し,実用に有利な複雑でない簡便な診断システムを構築し,システムの有効性を示した.設備診断の中でも特に信号検出が困難な,低速回転軸受の損傷診断にジャークセンサを使うことの優位性を明らかにした.
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