研究課題/領域番号 |
23560285
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
山田 貴孝 岐阜大学, 工学部, 准教授 (00273318)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ロボット / 多指ハンド / 把握系の安定性 / 複数対象物 / 高度な操り / 剛性行列 / 最適把持の設計 |
研究概要 |
人間は様々な形状の対象物を器用に把持し,操ることができる.このような能力をロボットで実現することが本研究課題の目的である.多指ロボットハンドの潜在能力を高めるために把持の安定性を解析し,平成23年度には次の成果を得た. 3次元空間内で2対象物を把持する場合,従来研究では接触点近傍の形状を2方向の主曲率で近似していた.より一般的な形状に対応するためには曲面の幾何学を考慮する必要がある.そこで,曲率に加え,捩率,計量テンソルをも導入した.指と対象物の接触の拘束と滑り接触および転がり接触の拘束を考慮して11行11列の剛性行列を導出した.数値例では剛性行列の固有値により安定性を評価し,固有ベクトルにより変位方向を求め,提案手法の妥当性を確認した. 従来研究では,指を直交仮想バネで置き換えて解析していた.これは,指先が並進変位のみを生じ,回転変位を生じない場合を意味する.現在研究・開発されている多くのハンドは回転関節から構成される.より正確に安定性を評価するためには,回転関節の効果を考慮する必要がある.そこで,関節を回転仮想バネで置き換え,二次元平面内において単数対象物を把持する場合を扱った.指先と対象物の接触の拘束,滑り接触と転がり接触の拘束は非線形となるため問題は複雑になる.この問題点を解決し,剛性行列を導出した.数値例では回転関節の効果により変位方向に違いが生じることを示し,提案手法の妥当性を確認した. 把握系の安定性と変位方向は剛性行列の固有値と固有ベクトルにより評価できる.しかし,数値のみでは,その妥当性が直感的に理解し難いという問題点があった.そこで,動力学シミュレータOpen Dynamics Engine (ODE)を用いて,把持モデルを構築し,変位モードを可視化する手法を提案した.これにより提案解析手法の妥当性が直感的に理解できるようになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,二次元平面内で指先の回転変位を考慮した解析,および3次元2対象物を把持した場合の解析を予定していた.研究実績の概要に記述したように,これらの理論解析,数値例を用いた妥当性の検証を完了している.最適把持の設計に今後取り組む必要があるが,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は次の研究を計画している.(1)二次元平面内において回転関節から構成される多指ハンドにより複数対象物を把持する場合に取り組む.この場合,指先と対象物との接触に加え,対象物同士の滑り接触と転がり接触の効果を考慮する必要がある.対象物の数に応じてパラメタ数が増加するため,解析は複雑になる.対象物同士の接触位置変位を表わすパラメタを導入する.回転関節を回転仮想バネで置き換え,対象物同士の接触の拘束を基に指先位置の変位を導出する.把握系のポテンシャルエネルギを定式化し,把握系の剛性行列を導出する.数値例により,提案手法の妥当性を確認する.(2)三次元空間内において回転関節から構成される多指ハンドにより単数対象物を把持する場合に取り組む.対象物の姿勢変位のパラメタが増え,非線形性が高く,解析は複雑になる.まず,回転関節を回転仮想バネで置き換える.指先と対象物との接触の拘束,転がり接触および滑り接触の拘束を基に,対象物変位と関節変位の関係を導出する.把握系のポテンシャルエネルギを定式化し,剛性行列を導出する.数値例により,提案手法の妥当性を確認する.(3)従来研究では,繊細な操りを目指し,指先で把持する場合を考察してきた.これに対し人間は,対象物を手により包み込むことで,外乱に対してロバストな把持を実現している.そこで,回転関節から構成される多指ハンドにより二次元平面内で単数対象物を包み込む場合の把握系の安定性解析に取り組む.指リンクと対象物との接触の拘束を考慮する必要があるため,問題は複雑になる.関節を回転仮想バネで置き換え,対象物変位と関節変位の関係を明らかにし,剛性行列を導出する.数値例により提案手法の妥当性を確認する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は,可視化の可能性とその有効性や問題点を確認するために,まずは無償の動力学シミュレータOpen Dynamics Engine (ODE)を利用した.このため,研究費残額「次年度使用額」が生じた. 平成24年度は,上述の「次年度使用額」も加え,研究に不可欠な計算機システム,ソフトウェアシステム,実験装置などの経費として使用する.具体的には次のような理由である. 把持の変位モードを可視化するためには,動力学シミュレータが必要である.より高度な解析および可視化を実現するためには,商用の高度な動力学シミュレータを購入する必要がある. 把握系の安定性を解析する際には偏微分を伴う複雑な数式計算処理が必要である.この援用に商用の高度な数式処理ソフトウェアが必要であり,購入経費に用いる. 把持の安定性を実験により確認するためには,多指ロボットハンドシステムを構築する必要がある.さらに,指先力を正確に検出するために6軸力センサを必要とする.これらの購入経費に用いる. これらの解析,シミュレーション,実験には高速な計算機システムが必要となる.この購入経費に用いる.
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