平成25年度は次の研究成果を得た. (1)三次元空間内で一つの対象物を把持する場合について,最適把持位置の設計アルゴリズムを構築した.アルゴリズムは次の手順である.まず,線形計画問題を用いて,力学的平衡を満たす指先位置と指先力を求める.そして,滑り接触と転がり接触,曲面の幾何学(計量テンソル,曲率,捩率)を考慮し,把持の剛性行列を求め,その固有値と固有ベクトルを求める.次に,多くの方向の外乱に対して安定性が高くなるように,正の固有値の数が大きい把持を選択する.多くの方向の外乱に対して均等な安定性になるように,正の固有値の中で最大と最小の比を用いて把持を選択する.最後に,大きな外乱に耐えられるように,正の固有値の積が最大になる把持を選択する.数値例を用いて,提案アルゴリズムの有効性を確認した. (2)剛性行列には,接触点位置,接触の方向,曲率,指先力,ばね剛性,など様々な把持パラメタが含まれる.そこで,二次元把持について,これらのパラメタで剛性行列を偏微分し,把持の安定性へのパラメタの変動の影響を解析した. (3)三次元空間内で複数対象物を把持した場合の安定性を解析した.指先と対象物との接触点における曲面の幾何学(計量テンソル,曲率,捩率)および滑りと転がりの効果に加え,対象物同士についても,それらの効果を考慮している.そして,剛性行列を解析的に導出した.数値例により,本解析の妥当性を確認した. (4)把持対象物の二次近似可動性を解析した.可動性では指先位置を固定し,対象物表面と指先表面との距離を用いて解析する.対象物の変動と距離との関係を同次変換行列を用いて詳細に表記した.曲面の幾何学を考慮して解析を行った.そして,二次近似可動性については,曲面の幾何学のうち計量テンソルと捩率は影響せず,曲率のみが影響することを明らかにした.
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