研究課題/領域番号 |
23560289
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
徳田 献一 和歌山大学, システム工学部, 助教 (60335411)
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研究分担者 |
似内 映之 和歌山大学, システム工学部, 助教 (00304189)
衣笠 哲也 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (20321474)
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キーワード | 知能ロボティクス / 機械力学・制御 / 認知科学 / 地震 / 足探り / 自然災害 / ロボットミドルウェア |
研究概要 |
本研究の目標は,自然災害などにより発生した脆弱な地盤の上をロボットが移動する際の問題を解決する手段としての足探りを切り口として,ロボットの脆弱な路面上での脚歩行の問題を解決することである.平成24年度は,路面上での脚歩行の問題として,(1)脚ロボットによる足探りや歩容変動を利用した路面環境推定,(2)足探りなどスキルのネットワーク表現,(3)実際の災害現場を意識した脆弱な環境上でのロボット運用の実現,これらの3つの問題について取り組んだ. (1)については,脚ロボットの歩容変動を利用した路面環境推定に取り組み,構築した6脚ロボットモジュールシステムを用いて実機による実験および物理シミュレータOpen Dynamics Engine上でのシミュレーション結果での比較を行うことにより多脚ロボットの強制歩容入力と出力歩容との差異についての考察を行った.この考察のため,新たに受動歩行ロボットの実機システムを構築し,受動歩行と能動歩行による環境推定システムの構築を試みた. (2)については,ロボットミドルウェアとして構築した水平分散アーキテクチャFDNetのインタフェイスを改良し,外部ソフトウェアである物理シミュレータOpen Dynamics Engineや数学解析ソフトウエアScilabとの接続を可能にした.このインタフェイスを用いて拡張されたFDNetを用いて,生物の移動についての水平分散アーキテクチャ上での表現,災害救助ロボットシステムの大域的なセンサ・操縦系統合,4脚ロボットによる足探り足場内部のすべり認識を行った. (3)現実の災害現場に対応するため,柔軟全周囲クローラ機構と遠隔操縦システムのためのセンサ系・アクチュエータ系の構築に取り組み,柔軟全周囲クローラRT04を用いたシステム,視覚系を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
瓦礫上を脚歩行するロボットに足探り能力を与えることを本研究の目的としており,脚ロボットの足と崩れやすい脆弱な足場との関係を探るシステムの構築は順調に進めることができた.その一方で,脆弱な足場環境として従来は注目されていなかった泥濘地が問題となることが明らかになってきた.次に述べる詳細を総合して,当初の研究目的に対しておおむね順調に進展していると結論づける. 【理由の詳細】 足探り能力を与えるシステムについては,(1)路面状態を探る手法と(2)足探りスキルを埋め込むためのロボットミドルウェアシステムの実現がある.(1)については,路面状態を足押しつけ圧により解析する複数の手法を試み,それぞれの利点および実施方法について明らかにすることができた.また(2)については,ロボットミドルウェアとしてFDNetのインタフェイスであるHIを拡張することにより,Open Dynamics Engineや,Scilabなどの外部解析ソフトウェアとの連携を行うシステムを完成させることができた. その一方で,この研究計画時点では明確になっていなかった泥濘地環境への対応の難しさが明らかになった.これは平成23年台風12号により発生した土砂災害現場へのロボット投入の可能性検討の中で明らかになった.土砂災害により発生した浸水は土砂を押し流し,泥濘地を形成する.この泥濘地は,台風だけではなく東日本大震災時の津波災害地において発生した浅い浸水域とも類似しており,移動ロボット運用上避けては通れない環境である.この問題への対応として,本研究目的である足探りを泥濘地においても実施することをける脚ロボットの足の引きに抜きにくさについての実験などにより取り扱いを検討し,脚の振動により足の動かしやすさが制御可能であるとの確信を得た.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成25年度は,これまでの研究成果の統合を行い,脆弱な瓦礫上での脚ロボット運用の見地からの評価を実施する.また,研究成果発表を積極的に実施する.前者について具体的には,6脚モジュールロボット上に構築してきた評価用システムを用いて,このシステム上に研究成果を次のように統合し評価を実施する. (1)6脚モジュールロボット実機と物理シミュレータ上の仮想ロボットによる環境推定の比較を行えるシステム (2)脆弱な路面として瓦礫環境および泥濘環境を想定し,静止した状態での足探りおよび歩行中の歩容変化による路面推定の実施 (3)足探りおよび歩容変化について,受動・能動を統一的に扱うためのロボットミドルウェア上でのセンサ・アクチュエータネットワークの埋め込み (4)実際の瓦礫環境での運用の観点にもとづく,足探りによる情報と他のロボットセンサ情報との統合
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は最終年度であることから,これまでの研究成果のシステム統合および評価の実施を主として行う.また成果発表を行う. 具体的には,6脚モジュールロボットを中心とした研究成果のシステム統合を実現するための(1)計算機との接続インタフェイス,(2)シミュレータの内部状態と比較するための観測用のセンサ,(3)柔軟全周囲クローラで実現した視覚システムとの融合を計画している. (1)および(2)では,消耗品(電子部品・機械部品)を用いて製作する. (3)では,視覚として,CCDカメラおよびレーザレンジファインダによる測距データとを融合できる計算機上のデバイスドライバソフトを構築するためのコンパイラの購入を予定している. また,成果発表としてはシステム制御情報学会および日本ロボット学会への学術論文投稿,および,日本機械学会,計測自動制御学会での発表を計画している.
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