研究課題/領域番号 |
23560293
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木口 量夫 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90269548)
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研究分担者 |
林 喜章 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30549134)
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キーワード | 知能機械 / バイオロボティクス / 生体信号 |
研究概要 |
本研究では,筋電信号,脳波信号および近赤外光情報を合わせた生体ハイブリッド信号を基に装着者の意思通りのパワーアシスト(運動補助)を行うロボットの実現を目指しており,今年度は主にロボット装着者の前腕回内外運動,肘屈伸運動,歩行運動に関する動作意思を筋電信号および脳波信号を用いて推定する手法の研究を行った. これまでの研究により,筋電信号を基に前腕回内外運動,肘屈伸運動,歩行運動に関する動作意思は推定できることが分かっているため,今年度は特に脳波信号を基にこれらに関する動作意思を推定することに重点を置いた.また,脳波信号から動作意思を推定するために有効な信号を抽出する手法を検討した.その結果,比較的低周波の脳波信号が動作意思推定に必要な情報を含んでおり,各有効チャンネルの脳波信号にウエイト値をかけたものを加算して動作推定を行うことが有効であることが分かった.これらの動作推定手法では,人工ニューラルネットワーク,遺伝的アルゴリズム,遺伝的プログラミング等のソフトコンピューティング技術を用いた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は,筋電信号計測システム,脳波信号計測システムおよび近赤外光計測システムを同時に用いて人が日常生活動作等を行う際の生体信号を計測し,動作推定を行うことを予定していた.筋電信号計測システムや脳波信号計測システムを単体で用いて動作推定を行う技術は大きく進展したが,これらを同時に用いる技術や時間遅れの大きい近赤外光を同時に用いる技術にはあまり進展がなかった. ただし,今年度の成果により,脳波信号に基にした歩行動作意思推定の実現可能性が高くなり,半身麻痺患者にパワーアシストロボットを装着し,患者の脳波信号を基に患者の思い通りの歩行を生成することが実現できる見通しが立ったことは大きな成果であった.その上,個人差は大きいものの,脳波信号から動作意思を推定するために有効な信号を抽出する手法においても大きな進展が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は筋電信号と脳波信号を中心とした生体信号と動作との関連を更に深く解明すると共に,これらの生体信号を融合した生体ハイブリッド信号の活用を検討する.また,近赤外光の利点することも検討する.更には実際の患者を対象とした研究にシフトさせることを試みる予定である.特に,生体信号計測実験においては,健常者に加え,脳卒中患者等,動作補助を必要とする実際の様々な患者を対象として,日常生活動作を行う際の生体信号計測を行う. また,生体信号計測実験の結果を基に各患者別の特性を解析し,健常者の生体信号との違いを明らかにすると共に各疾患の生体信号の特徴を明らかにする.もし実験した全ての疾患別の生体信号の特徴を明らかにすることが困難であった場合は,対象の疾患を絞ることで対応する. 解析した実際の患者の生体信号を融合させ,患者別あるいは疾患別の生体ハイブリッド信号を生成する手法を提案する.ここでは,各患者の生体信号の特徴から,自動的に各患者の症状に適した生体ハイブリッド信号を生成するものとする. 最後に,患者の症状に応じて適応する生体ハイブリッド信号を基に各患者に合わせたパワーアシストを行う制御アルゴリズムを提案し,外骨格型パワーアシストロボットを用いてパワーアシストを行うことを目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費を用いて,これまで用いてきた外骨格型パワーアシストロボットの保守・改良を行うための消耗品(加速度計やエンコーダ等のセンサ類,モータドライバやスイッチ等の電子部品類,電極や電極を貼りつける際に用いるペースト等の実験消耗品類)を購入する予定である.また,実験に協力した被験者への謝礼として実験協力費を使用する.更に,本研究で得られた成果を国内外の講演会等で発表するための旅費および参加費用にも使用する予定である.なお,平成24年度に分担金20万円を使わなかったのは設計が終わらなかったためであるが,その分は,平成25年度に実験用ロボットをリメイクする際に使用予定である.
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