研究課題/領域番号 |
23560297
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
内村 裕 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00416710)
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キーワード | ネットワークロボット / 分散制御 / 遅れ時間系 / 移動ロボット / 最適配置 |
研究概要 |
本研究では、複数の移動ロボットが無線通信を中継する配置に自律的に移動することによって無線ネットワーク網を構築し、探索ロボットの活動範囲を拡張すると共に、探索ロボットの移動に追従して動的に配置を最適化するための制御系を開発することを目的としている。 当年度においては、下記のように中継を行う各ロボットの最適な配置位置を算出するための手法の開発や、遅延を含む制御系の設計における保守性を緩和する理論の構築を行った。 1.最適中継位置を算出する指標として、受信電波強度を導入した。同強度は、中継ロボット間の通信速度に強い相関があるうえ、取得時間が短いため、通信速度を測定する間にロボットが移動することによる測定誤差の問題が解消する。一方、受信電界強度は極めて変動しやすいため、ロボット間距離を積分変数とする低域通過フィルタを適用し、強度値の変動によってロボットが必要以上に振動的な動作をすることを抑制した。 2.中継時に発生する遅延を含む制御系(遅れ時間系)の性能を向上するため、従来のリャプノフ・クラソフスキー関数に替えて、完全二次型の関数を導入し、性能劣化の要因となる保守性を軽減した。また、同関数の微分によって安定性を確保する数値解を算出する際に、安定条件を与える行列の算出過程を改良することで実装可能な解を導き出すことに成功した。 3.上記理論面での検討を踏まえ、コンピュータ上での数値シミュレーションを十分に行い、提案手法の有効性を確認した。その後、昨年度までに製作した複数の移動ロボットを使用し、壁などによって電波の伝搬が阻害される屋内環境において検証実験を行った。また、翌年度の総合実験の準備段階として、探索ロボットを人型ロボットとした基礎実験を併せて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究の実施においては、前年度成果について自己評価および学会等で発表した際に指摘された点を十分検討し、当初計画における手法を、より改善し性能を向上する手法を考案、実装した。また、同手法の検証は、数値シミュレーションおよび検証実験を繰り返し行って検討し妥当性を確認している。 以上のように、本年度においては実環境における実験も含めた検証段階にも進んでおり、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究課題の最終年度であり、下記のような方策のもとで研究を行うと同時に、これまで構築した成果を統括する総合実験によって、本研究の総括を行う予定である。 1.中継移動ロボットの自律性を向上するために、ロボットの自己位置を推定する機能の導入を目指す。ロボットに搭載したセンサによって、外界(環境)を自律的に測定することで、環境地図を構築し、同地図を他の移動ロボットと共有することで、互いの位置関係をより正確に取得する手法を開発する予定である。 2.通信を含む制御系の設計においては、実際の制御対象のモデルを陽に考慮した制御系について制御器の設計を行い、同制御器によって系を安定かつ性能を向上することを目指す。 3.実際の建物内において、受信電波強度および実質通信速度(スループット)をリアルタイムに計測しながら、中継ロボットの位置を自律的に制御する統合実験を行い、本研究の実用性についての検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては、移動ロボットが自己位置を推定するための機能の実装に関わる、計測装置や同推定をソフトウェアで行うためのプラットフォームとなる演算装置などの導入に関わる費用が必要である。 また、広範囲な実験を可能とするため、従来とは異なるタイプロボットの台数を増やす予定である。さらに、研究成果を広く国内外で発表するための論文掲載費および旅費としても使用する予定である。
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