研究課題/領域番号 |
23560298
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
畠山 省四朗 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (40138954)
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研究分担者 |
岩瀬 将美 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (50339074)
井筒 正義 東京電機大学, 未来科学部, 助教 (60550580)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 操作支援 / 安定化制御 / マンーマシンインタフェース / モデル化 / HAM / 身体自励振動 / 引き込み現象 / パラメトリックノイズ |
研究概要 |
本研究は,(1)不安定系操作時に自らの身体の一部を振動させる運動(身体自励運動と呼ぶ)もしくは身体自励運動を想定することによって操作技術が向上する仕組みの解明と,(2)その仕組みを利用した初心者の操作技術熟達支援インターフェースの開発,を目的としてる. H23年度は,研究実施計画に従い実験環境の整備を中心に行った.まず,モーションキャプチャーシステム,表面筋電位計測器,速度・加速度計測器,光トポグラフィーなどの各種計測装置を連動させる計測環境の構築を行った.この計測環境を利用して,表面筋電位情報から人体一部の運動を推定する観測アルゴリズムを提案し,その有効性を実験にて確認した.その成果は日本ロボット学会にて学会発表を行った.また,この表面筋電位から人体運動を推定する機構を利用したマンーマシンインタフェースを提案し,このインタフェースを通してボールのヒッティング動作を行う環境を構築した.今後,このシステムを利用し,身体一部を振動させることによって,ヒット率の向上がみられるか,脳機能への変化が現れるかを確認する. また,棒立て操作実験を通して,人間の視覚および力覚フィードバックの特徴量を提案・評価する基礎的な研究を行った.制御工学の観点から人間を一つのコントローラとみなし,閉ループ系同定手法により同定し,人間の視覚および力覚フィードバックにおける特徴を見出す解析を行った. さらに,脳機能の状態を観測するために,光トポグラフィーを用いた脳血流量観測システムを構築し,音楽を聴いているときの脳活動の変化や集中力,リラックスなどの状態変化を計測した.身体自励振動を生じさせることにより,脳活動領域が選択的に集中する可能性があるため,このような状況を観測し,また音楽などの外部刺激によって集中状態を作り出すことができるかという基礎的な研究でもある.一部の成果は,国際学会にて発表をする予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H23年度の研究計画では,(1)実験環境構築,(2)パラメトリックノイズの影響を含めた間欠的制御モデルの検討,(3)パラメトリックノイズと身体自励振動の関係解析,の3つを目標とした.(1)はほぼ計画通りに遂行できたが,(2)の制御モデルの検討では,人間操作のモデル化およびその同定手法の検討にとどまり,一定の成果を見出すまでに至らなかった.現在,人間操作のモデル化を進めるために,drift-actモデルを制御系の枠組みで表現する方法を検討している.(3)については光トポグラフィーを使った脳活動量計測を行っており一部達成できたが,身体自励振動との関係性を見出すまでには至っていない.そこで,被験者に依頼する実験方法の再検討を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の成果と問題点を受け,身体自励運動と操作熟達の関係をモデル化することに注力する.特に,人間の操作が集中時と非集中時では異なるという仮説の上に成り立つDrift-Actモデルの解析を進める.Drift-Actモデルは概念的なモデルであるが,これを実質化するために,制御理論の枠組みで捉える理論的研究を推進する.そのキーは,人間をコントローラと見立てて,安定化制御器,非安定化制御器の切り換えが行われるものと仮定したハイブリッドコントローラであると考えている.このモデルを検証すべく,例えば,棒立て動作やボールヒッティング動作時に身体自励運動を加えたときに,モデルが示す挙動と実際の人間の操作挙動とを比較し,その差を埋めるようにモデルを改良していく予定である.また,身体自励運動を外部刺激として操作者に与えることのできるウェアラブルなマンーマシンインタフェースの設計を,これらと並行して行う.ウェアラブルなマンーマシンインタフェース開発には,能動的―受動的なアクチュエータの組み合わせによって人体と機械との間に柔軟性を持たせるものとする.
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度の研究推進方策にしたがって,実質的なDrift-Actモデルを構築するための,身体動作計測環境の改善,および身体自励運動を外部刺激として引き起こすウェアラブルなマンーマシンインタフェースの開発を行うために,主に物品費としてを使用するを検討している.また,被験者を募り実験に協力してもらうために,協力者に対する謝金を用意する.成果を公表するために,学会発表やWebでの成果報告にも努める予定である.
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