研究課題/領域番号 |
23560304
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
川西 通裕 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00283870)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
Beowulfクラスタ計算機を拡張したGPGPUクラスタにおいて効率よく演算可能な超並列演算を活用する知的制御系の設計手法について本年度は以下の(1)~(4)の研究成果を得た。 (1)知的制御系設計法の開発に必須となる制御システムのロバスト性および安定性について、独自のアルゴリズムである「Stability Feeler」に基づくアルゴリズムを拡張して、精度が高い解析手法を開発した。提案した手法ではパラメータ領域を分割することで、超並列計算を活用し効率のよい解析を可能としている。 (2)知的制御系設計のための有力なアプローチとなるSOS(Sum-of-Square)について、制御系設計問題の非凸性に起因する保守性を低減させるための有効な設計手法を開発した。従来手法では、高性能な制御システムを設計するためには高次元の演算が必要であった。提案手法においては、高次元基底の導入を回避し、設計問題の双対性を活用して超並列演算可能な独立性の高い子問題を導出して問題を分割し、効率の良い超並列演算が可能な設計アルゴリズムを開発した。 (3)未知環境への優れた適応力を有する知的制御系の設計手法として、力と位置のハイブリッド制御システム設計手法を提案した。従来手法では不可能であった動的パラメータと幾何パラメータの両方が未知の環境において力と位置のハイブリッド制御が可能な、高度な適応力を有する制御系の設計を可能として、実機を用いた実験により制御系が理論通りの特性を有し、実際の未知環境において有効に機能することを確認した。 (4)未知環境における優れた行動を獲得するための手法として、UNDX(正規分布交叉)に基づく実数値遺伝的アルゴリズムを拡張した設計手法を提案し、有効性を検証した。提案手法では、制御系設計問題の特性を利用した探索領域推定法を開発し、従来手法と比較して効率の良い探索を可能とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超並列演算を活用した知的制御系の設計アルゴリズムとして、4つのアプローチの(1)多項式表現を用いたパラメトリックアプローチ、(2)ロバスト適応制御、(3)多項式の正定性を用いるSOS(Sum-of-Square)アプローチ、(4)正規分布交叉に基づく実数値遺伝的アルゴリズム、に基づいてそれぞれGPGPUクラスタ計算機の特性を活用した超並列演算を有効に利用できるアルゴリズム開発のアイデアを得ることができており、また、これらの着想に基づいて具体的に新たな設計手法を提案することができた。これらの成果により、研究プロジェクトの初年度の計画内容に対して、知的制御系の設計アルゴリズムの研究については、当初の計画を部分的には上回る内容で順調に実施することができた。 開発した知的制御系設計手法の有効性の検証について、現在は、これまでに開発したプログラムライブラリを活用することができ実装がより容易に行える現有のGPGPUクラスタ計算機および実機実験(モバイルマニピュレータ)により実施している。これらの検証実験を十分に行い早期に結果をまとめる必要が生じたため、現有設備での実験を優先し、実験データが十分に得られた後に、GPGPUクラスタ計算機の改修を実施するよう一部研究計画を変更した。しかし、この計画変更は設計アルゴリズムを順調に開発することができた結果、現行設備での実験検証を優先する必要が生じたものであり、当初の研究計画については計画通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、一部研究計画を変更して現行設備(BeowulfクラスタおよびGPGPU搭載計算機)での実験を優先し、BeowulfクラスタのGPGPUクラスタ計算機への本格的な拡張時期を次年度へと変更しため、次年度(平成24年度)は、まず現行設備が必要となっている知的制御系設計法開発・検証のための制御実験を早期に終え、初期の研究成果を完成させる。次に、現行設備を本研究の設備費を用いてGPGPUクラスタ計算機に改修を行い10080プロセスの超並列演算が可能な設備へと拡張し、新規の計算機環境においてアルゴリズムの実装を容易にするライブラリプログラムの開発に着手する。 知的制御システムの設計手法については次年度についても本年度の四つのアプローチ(多項式パラメトリックアプローチ、ロバスト適応制御、SOS(Sum-of-Square)、確率モデルに基づく実数値遺伝的アルゴリズム)の研究を継続する。また、実際の知的機械システムへの応用としては、すでに「モバイルマニピュレータ」については研究計画よりも早い本年度の段階で制御実装を終えることが出来ており提案する制御手法の未知環境への適応性について有効性の検証を行っているが、次年度以降はさらに「ネコ型4脚走行ロボット」、「一脚跳躍ロボット」についても提案する制御手法の実装を進め、より複雑な未知環境への適応性について提案する知的制御システムの有効性の検証を行い、設計アルゴリズムの研究にフィードバックして、有効な制御系設計手法の開発を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究プロジェクトで開発した知的制御のための並列演算が可能な制御系設計アルゴリズムは、実装環境がすでに整備されている現行の設備(Beowulfクラスタ、GPGPU計算機)での初期検証が可能であり、また並列性や適応性について早期の評価が必要であるため、まず現行設備での実験を優先して実施することにした。そのため、次期GPGPUクラスタ計算機の導入次期を遅らせ、次年度(平成24年度)に物品費を繰り越した。よって、次年度は現有するGPGPUクラスタ計算機における実験の早期に完了させ、プロトタイプである現行GPGPU計算機による性能データを解析して最適な次期クラスタ計算機のハードウェア構成を導出し、繰り越した研究費の物品費を用いて次年度の前半期にGPGPUクラスタ計算機の拡張を完了する。 クラスタ計算機を改修・拡張した後に、新たな計算機システムにおいて超並列演算に対応した知的制御系設計のためのCADソフトウエアを効率よく開発するためには、ベースとなる基本システムについてソフトウエア・ハードウエアの高度な専門知識が必要となるため、ソフトウエア開発技術部門の技術サポートを活用する。このためコンサルティングの謝金として本研究費の予算を使用する。 また本分野における主要な国際会議であるCDC(Conference on Decision and Control)において研究成果を発表するとともに、今後の研究のために資料および情報の収集を行う。
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