研究課題/領域番号 |
23560304
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
川西 通裕 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00283870)
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キーワード | 知的制御系設計法 / 未知環境 / 超並列計算 |
研究概要 |
未知環境に対応できる知的制御系の設計アルゴリズムとして,リアプノフ関数とDOA(Domain of Attraction)に基づく強化学習法を提案し,倒立振子による実験を通じて有効性を検証した.提案手法では,DOA外部では強化学習,DOA内部は多項式モデルとSOS(Sum-of-Square)アプローチに基づく制御戦略をとる手法であり,未知環境に対して高い適合性を有することを確認できた.また知的制御システムの応用として,本年度は「ネコ型ロボット」,「跳躍ロボット」,「車両操舵支援システム」,「装着型パワーアシストシステム」において成果を得た.以下各テーマにおける成果の概要をまとめる. (1)ネコ型ロボットの知的制御:制作したネコ型ロボットRoboCat-1において,未知環境に対応できる走行様態であるTrot-Runningを実装した.この再,位置決め精度と衝撃吸収を同時に実現する仮想コンプライアンス制御を提案し,有効性を検証した. (2)跳躍ロボットの知的制御:未知の着地面にも対応できるロバストな跳躍始動,空中姿勢維持,着地時衝撃吸収動作を実現できる運動制御システムを実装し,実験により有効性を確認した. (3)車両操舵支援システムのインテリジェントコントロール:時間軸スケーリングとflatnessに基づく厳密線形可を用い,また非線形制御器のゲインチューニングにはPSO(Particle Swarm Optimization)を援用するロバスト制御システムの設計手法を開発した.またロボットカーを用いた走行実験により提案手法の有効性を証明した. (4)装着型パワーアシストシステムの制御;外乱オブザーバに基づく重量・摩擦推定と機構系の数学モデルに基づく重力補償により,未知重量の把持物に対応できる装着型パワーアシストシステムのトルクセンサレス制御手法を提案し,有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の柱となる三つの点(1)超並列計算機システムの構築,(2)知的制御系設計アルゴリズムの開発,(3)未知の環境で動作するロボット・メカトロシステムへの応用,の達成状況について,以下に示す通りすべての項目において当初の計画に沿ってこれまでのところ順調に進展している.以下,各点について達成状況の説明と評価の理由 (1)既設のBeowulf型クラスタ計算機を拡張して新たにGPGPUを導入し,超並列計算に対応できる計算機システムの改修を達成した.さらに,既設のMPI(Message Passing Interface)ライブラリに加えて,MATLABのDistributed Computing Toolboxをワーカープロセス数無制限で導入して効率のよりアルゴリズム開発環境を整備したため,知的制御アルゴリズムの開発を効率よく進めることができている. (2)リアプノフ関数とDOA(Domain of Attraction)に基づく強化学習を用いた効率のよい知的制御システムの設計アルゴリズムを構築することができており,またDOA内部では線形制御理論よりも広いクラスのシステムに対応できる多項式システムに基づいてSOS(Sum-of-Square)アプローチに基づく制御系設計手法を開発し,実際の制御系における有効性の検証まで達成した. (3)独自に製作した「ネコ型ロボット(RoboCat-1)」,「一脚跳躍ロボット(TTI-Hopper)」,「パワーアシストシステム(TTI-Exo)」およびZMP社製「自律ロボットカー」を用いた実験環境において,提案する知的制御システムの実装を行い,各システムにおいて未知環境に適合できる知的制御システムの有効性を証明することに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の三つの柱,すなわち(1)超並列計算機システムの構築,(2)知的制御系設計アルゴリズムの開発,(3)未知環境で動作するロボット・メカトロシステムへの応用,について,それぞれ以下の内容で研究を進める. (1)すでにMPI環境で開発したプログラムを,MATLABのDistributed Computing環境へ移し,より効率の良い開発環境で,知的制御系設計アルゴリズムの実装を行う. (2)リアプノフ関数とDOAによる強化学習の内容をさらに発展させ,現在,SOSアプローチで扱っている制御対象は多項式システムであるが,今後は有理システムおよび一般の非線形システムへと非線形ディスクリプタシステム表現を活用して拡張する. (3)独自に製作したシステム「ネコ型ロボット(RoboCat-1)),「跳躍ロボット(TTI-Hopper)」,パワーアシストシステム(TTI-Exo)」,「ロボカー」を中心として,現在の知的制御システムをさらに発展させ,またSOSアプローチを超並列計算機環境へと実装した制御系設計アルゴリズムにより,最適な制御系の設計を達成する.
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次年度の研究費の使用計画 |
主に国際会議における成果発表のための費用として利用する.本研究費において導入した研究環境の調整費,維持費にも利用するとともに,資料および情報収集,データ整理などの費用としても活用する.
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