研究課題/領域番号 |
23560306
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
河合 俊和 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (90460766)
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研究分担者 |
中村 達雄 京都大学, 再生医科学研究所, 准教授 (70227908)
西澤 祐吏 香川大学, 医学部, 助教 (50545001)
西川 敦 信州大学, 繊維学部, 教授 (20283731)
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キーワード | ローカル操作 / マニピュレータ / 従来術具 / 内視鏡下手術 |
研究概要 |
少子高齢化が進む日本では,患者に侵襲が少ない内視鏡下手術が広まっている.一方,人口は都市に集中するため,最新の手術ができる医師や大病院も都市に多い.地方に住む患者が最新の手術を受けるためには,都市へ出向くか,現地病院での出張手術を待つ必要がある.解決策の一つとして,ロボット支援による遠隔手術が研究されている.これは,地方に居る患者を都市に居る医師がマスタースレーブ制御マニピュレータで手術する構想である.ロボット支援によるリモート操作は技術的に可能だが,緊急時の患者への対応などを考えるとローカル操作が適している.これまでに我々は,内視鏡下手術を支援する,従来の術具を装着可能なローカル操作型のマニピュレータ(LODEM)を開発した.すなわち,執刀医の第三の手として,使い慣れた従来鉗子を装着したマニピュレータを操作することで,医師とロボットが清潔野で協同する手術の有用性を示した.現在,LODEMを用いた地方病院における内視鏡下ソロサージェリーの実現を目指している. マニピュレータの簡単な運搬と設置は,持ち運ぶ医師にとって重要である.すなわち,分割や変形による小型化が可能なマニピュレータ機構が必要となる.手術マニピュレータ機構は多数開発されているが,簡易に分割や変形することは難しかった.そこで,スライダクランク機構に基づく鉗子姿勢決めアームとケーブルロッド機構に基づく鉗子駆動部を備える可搬型の5軸マニピュレータを考えた.本研究の目的は,スライダクランク・ケーブルロッド伝達機構を有する手術支援マニピュレータの開発である. 本年度は,マニピュレータ機構の設計と試作を行い,フィードフォワード制御系を構築して,位置決め精度を計測し,評価実験としてタスクモデルでの操作時間計測,ドライ環境での模擬手術,in vivo実験を行った.基本性能と限界を明らかにして,機構制御の改良方策を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ローカル操作型着脱式術具マニピュレータは,マニピュレータ機構,操作入力インタフェース,操作制御系の3つの要素で構成する. マニピュレータ機構は,水平面内での柔軟性が高いSCARAの先端に受動ジンバルを設けた機構,腹壁上のピボット点を機構的に構成するスライダクランク・ケーブルロッド機構を設計試作した.これらは,単孔式内視鏡下手術用の術具を含む複数種類の従来鉗子を着脱可能な5または7自由度を有する. 操作入力インタフェースは多自由度マニピュレータ機構に対応し,有線および無線方式の手先スイッチ型,フットマウス型,ジョイスティック型の機構と回路を設計試作した. 操作制御系としては,マニピュレータに装着した鉗子先端が水平面と長軸方向に移動するフィードバック制御系,内視鏡の姿勢変化に対応するレジストレーション機能,マスタースレーブ制御系,On/Off信号フィードフォワード制御系を構築した. 試作マニピュレータを用いた操作実験として,位置決め精度や動作遅れなど性能評価,医師など複数名を対象としたラボ環境でのタスクモデル操作時間計測,ドライ環境での模擬手術を行った.機構制御系の課題を明らかにして,改良機構の設計と試作,改善システムの構築を行い,動物in vivo実験を行った.これらにより,機能性や操作性を評価した.以上の評価実験は,毎年度実施した. 当初計画では3年間で,マニピュレータシステムを設計試作し,その評価実験を予定していたが,この2年間で2回のシステム開発と評価を通じた研究を実施しており,当初の計画以上の進展となった.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に明らかになった機構制御系の課題で未対応部分の研究に着手する.これまでに設計試作したマニピュレータシステムの改良だけでなく,新たなマニピュレータ機構,操作入力インタフェース,操作制御系へも意欲的に取り組む.試作システムについては,タスク操作実験,動物in vivo実験を行って,機能性や操作性を評価する.また,マニピュレータでの臓器硬さ計測などの高機能化を図る.これらは,研究分担者と協同して効率的に推進する.
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次年度の研究費の使用計画 |
マニピュレータ機構や操作インタフェースの設計試作および評価実験に関し,機械電子の部品や材料,手術機材などの物品費に充当する.また,研究の打合せや成果発表など旅費にも充当する.スピード感を持って本研究を推進するため,上記以外の経費が生じた場合にも,研究計画に変更が出ないよう対応する.
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