研究課題/領域番号 |
23560311
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
杉本 俊之 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (10282237)
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キーワード | イオナイザー / コロナ放電 / 除電電流 / 除電モデル |
研究概要 |
当該研究で確立した近接設置型イオナイザーは、除電対象物に近接させ、接触させるか、接触しないギリギリの距離で使用することに適したものである。したがって、従来までのチャージドプレートモニタを用いた評価法では、十分な評価ができないため、イオンの供給速度を定量化するための仕様として、簡易除電電流を導入した評価法を開発した。これは、初期電圧を200V、600V、1000Vの3段階に変化させ、それぞれ10分の1に減衰するまでの除電時間を測定し、初期電圧を除電時間で割った値で評価するものである。この簡易除電電流は、送風しない場合、横軸に初期電圧、縦軸に簡易除電電流をとったとき、ゼロクロスする比例関係にあり、一方、送風した場合は、送風の速度に依存して比例関係にバイアスがかかった直線で評価されることが分かった。これを空間電荷密度、ギャップ、初期電圧、風速をパラメータとした式で表現し、実験値と同様な変化をすることを明らかにした。 上記の実験により、提案するイオナイザーを評価するための除電モデルが構築され、このイオナイザーを高性能化するために必要な指針が明らかとなった。具体的には、イオナイザーと対象物とのギャップに逆比例して除電時間が短くなること、また、風速が強いほど、除電時間が短くなること、針電極間のイオン電流を大きくすれば、除電時間が短くなること、が理論と実験より明らかとなり、逆に、これらの値を調整することで除電時間が調整できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
開発したイオナイザーの除電モデルが構築され、理論的かつ実験的に実証された。これにより、チャージドプレートモニタによる簡易除電電流の測定値と、当該除電モデルから導き出された式を用いてイオンの空間電荷密度が測定できるようになった。これは、イオナイザーの性能を知る上で、重要であるとともに、どのパラメータを変えれば希望の特性が得られるのかを知ることができる。また、一旦、200V、600V、1000Vの3点で電圧電流特性を測定してしまうと、その特性線を用いて、他の初期電圧に対する除電時間が推定できるようになった。従来型のイオナイザーによる除電モデルは、解析的に示されていないため、このような重要な知見を得ることができなかった。本開発のイオナイザーは、従来型よりも高速・高密度な除電ができるだけでなく、除電モデルが示唆する方法で性能を向上できる点が当初の計画よりも進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大きな変更はない。どのパラメータを変えれば、イオナイザーの性能がどう変化するかが明らかになったため、これらのパラメータを変えて設置できるようなユニットタイプのイオナイザーを構築する。これは、除電領域を自在に変化できるため、どのような製造ラインにも柔軟に対応できる利点がある。また、製造ラインで使用することを前提に、除電モデルを拡張し、移動している対象物を除電する際の除電モデルを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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