研究課題/領域番号 |
23560312
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
南谷 靖史 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (10323172)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | がん治療 / 高周波バーストパルス / パルス電磁波 / 非線形伝送線路 / SOSダイオード / アポトーシス / 出芽酵母 / がん細胞 |
研究概要 |
本研究課題ではがん細胞にナノ秒の高電界を印加して,細胞にアポトーシスを再生させ,がんを治療する超短パルス高電界によるがん治療法におけるパルス高電界印加方法を確立するため,患部に高電界パルスを印加できる高強度高周波パルス電磁波放射装置の研究,細胞へのパルス電磁波による高電界印加実験を行うことを目的としている。本年度は50MHzの単一周波数で+10kVの単極性高電圧パルス列を100nsの間,連続して発生する方法の検討,試作,評価を行うことを目的としていた。そこでフェライトコアを用いた非線形伝送線路によるパルス発生方法とSOSダイオードと可飽和リアクトルを用いた方法の2つ検討した。成果として非線形伝送線路を用いた方法では,両極性パルス電圧で,ピークピークが7kV,バースト持続時間100ns以上で周波数173MHzの単一周波数を得ることができた。バースト持続時間は目標値を,周波数では24年度の目標値に近い値を達成できた。出力電圧は25年度の目標である両極性を達成できたが出力値が23年度目標の7割程度と,来年度への課題を残した。SOSダイオードを用いた方法では出力パルス電圧が両極性のピークピークで13kV,バースト持続時間がクラスタ状のパルスが飛び飛びながら2000ns持続したが,電圧が高いのが1つ目のクラスタパルスのみであったのが課題として残った。また,24年度の研究課題である,動物細胞のモデル細胞である出芽酵母,がん細胞に電界が与える影響について一部実験をおこなった。出芽酵母では70MHzのバーストパルス電界でアポトーシスによる細胞死とみられる現象が観測された。がん細胞による実験では1MHzと70MHz以上でアポトーシスの兆候が見られたが細胞死を起こしたのは1MHzのみであった。さらに細胞への影響について調査を進めるが,この結果は装置の検討に十分フィードバックできるものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高強度高周波パルス電磁波放射装置のバーストパルス発生方法において2つの方法それぞれで目標値を上回る成果を得られた項目があった。また24年度の計画であった細胞への影響を一部実施しアポトーシスが起こることを確認し,アポトーシスを得られる条件の装置へのフィードバックを可能にした。
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今後の研究の推進方策 |
24年度では200MHzの単一周波数で,ピークピークで10kVの両極性極性高電圧パルス列を,非線形伝送線路を用いた回路では500nsの間,連続して発生する装置,SOSダイオードを用いた回路ではクラスタ状のバーストパルス列の大きさを2番目以降も電圧値があまり下がらない装置の設計,試作,評価を行う。200MHzの周波数は水中で電磁波を生成,集束することが可能であるので,電磁波発生も確認する。そして200MHz,30kV/cmまでの電界がモデル細胞である出芽酵母,がん細胞に与える影響について観測する。この影響については,電極間で直接高電界パルス列を印加した場合と,高強度電磁波パルス列で電界を印加した場合それぞれで実験を行い,細胞の挙動に違いがあるかどうかに着目し調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度は2つの方法のパルス発生装置を並列して開発したことと,24年度予定であった細胞による実験を開始したため,その分の予算が必要となり当初購入予定であった高電圧高速半導体スイッチの予算をこれに割り当てた。24年度も同様の状態が続くため,25年度の予算に加え半導体スイッチ分の予算の一部を繰り越し充てることとした。
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