本研究では、磁気発振型正弦波出力のインバータとブリッジ結合磁路を組み合わせて、直流電流により既存の交流系統への出力電力制御が可能な可変出力の正弦波インバータを開発する。数値目標を、制御可能な出力電力が4 kW以上で電力変換効率を92 %以上に設定した。この目標を達成するために初年度から次年度に掛けて、ブリッジ結合磁路を除いたインバータ本体を試作して、性能試験を行った。インバータ本体の電圧型ブリッジ回路本体を構成するMOSFETの外部に高速ダイオードを付加してMOSFETの内蔵ダイオードの逆回復特性を見かけ上改善させること、コモンモードチョークを利用したノイズ低減策について工夫した。その結果、最大出力電力3.6 kWで電力変換効率90 %と、目標値のほぼ90%の値が得られた。インバータ本体の設計は、汎用電子回路シミュレーターを利用し、ブリッジ結合磁路の磁心モデルも考案した。さらに、次年度では、市販の3次元磁場解析ソフトJMAGを用いて磁心内部・外部の磁界分布を解析した。磁心寸法、巻線数及び解析用のメッシュ長を変化させて磁界分布を計算したところ、磁心寸法により磁心の一部に磁界が偏る領域が存在することなど、幾つかの新しい事項を明らかにした。 最終年度では、インバータ本体とブリッジ結合磁路を組み合わせて、直流電流により既存の交流系統に供給する電力が制御可能な可変出力・磁気発振型正弦波インバータを設計製作し、性能試験を行った。その結果、制御可能な出力電力が1.6 kWで電力変換効率83 %と目標値には達しなかったが、ブリッジ結合磁路を利用することにより直流電流で交流出力電力の制御が可能であることを明らかにした。また、本インバータに必要な外部インダクタを漏れインダクタンスを有するコモンモードチョークに置き換えることにより、構成の簡略化が期待できることを明らかにした。
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