本年度はリチウムイオン電池の運用と劣化特性についてさらに検討を進めた。 1)太陽光発電は一日の日射量によって変動する。毎日、一定量の電気を供給するためにリチウムイオン電池を使用するが、必要な電池の容量を決定するためには日射量が不足する日が何日続くかが重要である。本研究では過去30年間における日立市の日射量のデータから、日射量の遷移確率を求めてマルコフ過程によるモデリングを行った。その解析結果に基づいて、一日の供給電力量を10Ahとし、電池容量をその2倍とした。2011-13年の2年間にわたって実験を行ったところ、供給が不足した日数は1年目が7日、2年目が2日であった。これらの結果をまとめてIEEEの論文誌に投稿したところ、2013年12月に論文が掲載された。 2)リチウムイオン電池の劣化特性を調べるため、1本ずつ電池を劣化させて抵抗や容量の変化を測定し、現在も継続して行っている。その結果、電池の容量は電池を通過した電荷量に比例して少なくなっていくことがわかった。とくに電池の電流を0.1Aのように小さくすると、抵抗の影響が少なくなるため、容量の変化を明確にとらえることができる。電流を1Aや2Aに増やすと、抵抗の影響が現れるほか、電気二重層のキャパシタの影響もみられる。この効果はすでに知られているものであるが、負極の電荷が少なくなる部分での電圧の変化を適切に表現することが重要であることを見出した。しかし、その変化は電池よってかなりばらつきがあるものであり、現在もその検討をおこなっているところである。また、4本の電池を並列にしたパックの劣化特性も調べている。基本的には1本の電池とほぼ同じ容量の変化を示すが、電池に流れる電流にばらつきが生ずるため、電池ごとの容量の変化について明確な結論を得るまでには至っていない。さらに検討を続ける予定である。
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