研究課題/領域番号 |
23560316
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
柳平 丈志 茨城大学, 工学部, 准教授 (10323213)
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キーワード | パルスパワー / パルス電源 / マルクス回路 / MOS-FET |
研究概要 |
本研究課題では環境汚染物質の分解処理において水中で電気的手段により化学活性種を発生させる場合の高電圧パルス電源の回路方式について検討している。水の誘電率を考慮すれば電極系は多くの場合に容量性負荷となるため、回路の電気的性能を決めるスイッチング素子については、電流の立ち上がり時間がアーク移行時間に比べて短いことと同時に、電極系を充電するための電流供給能力が十分であることが要求される。このため、MOSトランジスタを多数直並列に用いてナノ秒のオーダーで同期運転する新しい回路技術が必要となる。このことについて検討した結果として、1キロボルト程度までの電圧に対応するMOSトランジスタを直並列に接続して1枚のプリント基板に収容したもの(以下、セルと呼ぶ)を製作し、さらに油中にて複数のセルを直列に接続することにより、セルの直列数に応じた高電圧のパルスを発生できることを実験的に確認した。実験では1枚のセル中に28個(4並列×7直列)のMOSトランジスタを収容し、さらに5枚のセルを直列に接続し、合計140個のMOSトランジスタを同期運転させた。本回路方式は、従来のマルクス回路で使用される抵抗充電方式に比べるとより高い繰り返し周波数で動作可能と考えられるため、本提案による回路方式によれば難分解物質の処理において高いスループットを可能にするものと期待できる。また立ち上がり時間は数ナノ秒程度であり、他のパワー半導体に比べエネルギー損失を低減できると考えられ装置の小型化あるいは大容量化に寄与しうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初23年度に実施予定していた複数セルの同時運転についてはトリガ回路の不備を修正することで本年度の前半に同時運転に至った。本年度計画していた大電流容量化の検討については計画を早めて23年度に実験を始め、本年度にはトランジスタ数を増加させセル内に実装した。また当初計画通り、スイッチング損失、負荷特性について理論的・実験的に検討を行った。繰り返し周波数を次第に増加させてトランジスタ、コンデンサの表面温度の変化を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には当初計画通り、水中の難分解物質の処理に関する実験を行いたい。対象とする物質はメチレンブルーを予定している。スループットおよび所要電力量を評価し、本処理の有用性について評価し、成果を学会発表および論文発表したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は製作したセルで不具合が生じやすい部位が特定され、試作装置の故障時に容易に補修できたため、新規製作にかかる諸経費を抑えることができた。次年度使用額については、次年度に請求する研究費と合わせて汚染物質浄化試験のための試薬の購入、測定用具の購入、およびパルス発生用セルの製作・補修費にあてる。
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