まず、前年度に引き続き「セル」の動作について詳細に検討し、次に、本提案方式の電源を用いて、水中の難分解性物質の処理実験を行った。本年度に得られた結果の概要は次の通りである。 ①セルの内部のMOSトランジスタの電圧・電流の軌跡を測定し、トランジスタの安全動作領域内で動作していることを確認した。②セルと外部磁場発生コイル(電源およびトリガ用)との間は絶縁油で完全に絶縁されているが、浮遊容量が存在する。高電圧パルスを発生する時には、この浮遊容量が充電されるために電流が流れる。この電流を含め各セルに流れる電流を測定した。この結果、最も低電位側に配置されたセルに最も大きい電流が流れることが分かった。③これまでの知見を考慮した回路モデルにより、任意の負荷抵抗、任意のセル枚数での端子電圧を予測することが可能になり、実験結果とも一致した。 ④繰り返し周波数 1 kHz までの動作を行なった。実際の運用上の上限周波数はセルにエネルギーを供給する高周波電源の規模(500 Wまで)で制限される。 ⑤磁気結合により電源供給を行う部分のエネルギー効率は、およそ 50% (500 W 給電時)であった。 ⑥浄水処理リアクタとしてステンレスメッシュ電極間にセラミックボールを充填したものを用い、これに被処理水を通水した。指標物質としてメチレンブルー色素を混入させた場合の脱色エネルギー効率はおよそ 8 kJ/mg (電力量評価はリアクタ電極における値)となり、他の研究グループによる報告例と比べて遜色のない結果が得られた。⑦多数のセルを並列運転する方法についても実験を行ない、脱色エネルギー効率は 9-12 kJ/mg となっている。
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