研究課題/領域番号 |
23560317
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
里 周二 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10215759)
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研究分担者 |
岡本 吉史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40415112)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 波尾振動雷性インパルス電圧波形 / 低インピーダンス負荷 / インパルス校正器 |
研究概要 |
2010年に発行された最新のIEC 60060-1で定義される標準雷インパルス電圧波形の発生が困難な大型高電圧機器の現地耐圧試験では,波尾振動性の雷インパルス電圧波形の使用が許されている。そしてこの時の波形パラメータの定義についてはIEC 60060-3に詳細が記述されている。この事実を踏まえ,本研究者らは波尾振動性雷インパルスの波尾長をカーブ・フィッティングから導出する手法について研究を行った。今年度の研究では,抵抗分圧器(5~10 kΩ)程度の低負荷がつながれ,発生波形が測定システムで直接測定される場合を想定した校正器の製作に取り組み,高精度の校正器の製作に成功した。内部抵抗は実測波形から計算できるものの,その値は小さければ小さいほど良い。湿式水銀リレーは1)高速動作が可能で,2)極性に影響されないが,動作電圧とアーク抵抗に非線形特性がある。一方,MOSFETは1)ドレイン-ソース間の等価抵抗は動作電圧に殆ど関係しない,2)素子の寿命は半無限である反面,等価抵抗が大きすぎる,通電可能電流が小さいなどの欠点がある。両者を使って,低インピーダンス負荷校正器での使用の適正を明らかにしするとともに,MOSFETの並列接続同時トリガー(20個を20ns以内のバラツキで導通)を実現した。同時に開発した,IEC 60060-3に基づく,振動波形の包絡線から波尾長を決定するアルゴリズムを内蔵したソフトウェアの性能も測定に使用したが,全く問題のないことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では,初年度の研究は低インピーダンス負荷校正器の開発のみで,波形解析ソフトウェア開発は含まれていなかった。しかし,初年度の研究でソフトウエアの開発も行うことができた。このため,(1)当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は以下の3点に絞って推進する予定である。1.ソフトウェアの開発。与えられた雷インパルス発生回路を計算し,発生波形の波形パラメータ(ピーク値,波頭長,波尾長)を計算することは従来から可能であったが,発生波形が与えられた時間パラメータを持つように素子定数を決定することは困難であった。唯一の方法として電気学会発行の高電圧試験ハンドブックに紹介されている方法がある。この手法は簡単な回路と発生波形を関係づけたグラフから計算する方法であるが,3%程度の誤差内に収めることは不可能でかつ残留インダクタンスを考慮することはできなかった。このプログラム(誤差は10の-8乗以下)が実現されると,雷インパルス発生回路解析の分野には格段の進歩がもたらされる。2.高速スイッチング素子の開発。提案する校正器の成功の鍵となると考えられるが高速,高圧(最高1500V),大電流(最大150A),低インピーダンス(ソース・ドレイン間0.1Ω以下)を満たすスイッチング素子である。700-800Vの固定電圧で動作させるなら湿式水銀リレーで可能であるが,最大50個をクラスターとした超並列MOSFETで実現することを計画している。超並列MOSFETが実現できれば内部インピーダンスは水銀リレー並みに低く設定でき,MOSFETの苦手とする大電流動作が可能となり,廉価で安定性に優れるMOSFETは従来の校正器に使われていた湿式水銀リレーに取り代わることができる。3.主コンデンサの選択。従来の校正器の主コンデンサは周波数特性に優れと残留インダクタンスの小さいマイカコンデンサが用いられていたが,寸法(体積で50倍くらい),価格(高圧タイプでは200倍くらい)で問題があったが,ポリマー(ポリプロピレン)コンデンサを超並列とすることによりこの問題を解決し,これからの校正器様コンデンサのトレンドを築きたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に開発されたソフトウェアはウィンドウズ形式になっていない。また,その実行速度にやや問題がある。次年度ではこの問題を解決するとともに素子自動計算プログラムを完成させることを計画している。また,「今後の研究の推進方法」で記述した通り,校正器に使われるスイッチング素子,高圧コンデンサの吟味が重要な課題となる。次年度の研究費はこのような目的に沿った方向に使用されるであろう。具体的には1.PC環境の整備及びコンパイラーの更新,2.高圧・高速MOS-FETの購入,3.高圧コンデンサの購入,に向けられることになろう。
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