研究課題/領域番号 |
23560317
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
里 周二 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10215759)
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研究分担者 |
岡本 吉史 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40415112)
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キーワード | 波尾振動性雷インパルス電圧波形 / 低インピーダンス負荷 / インパルス電圧波形校正器 |
研究概要 |
2013年の発行に向かって,IEC 601893-2の改訂が進み,TDGでは当該研究の対象となる波尾振動性雷インパルス波形の発生情報に関する規格もあらかた定められた。 このTDG波形を処理し波形パラメータを抽出するアルゴリズムも完成し,計算されたパラメータはTDGに基準値に極めて近く万足の行くものであった。また振動部分をスプライン曲線で補間し,補間曲線の微分係数が零となる点を結ぶ曲線が包絡線となることをアルゴリズムに追加することにより,包絡線の決定が容易かつ確実となったことは一つの成果である。 また,ハードウェアに関しては当初使用を予定していた高耐圧,大電流のMOSFETが製造中止となったことが大きく足を引っ張ったが,代朁のMOSFETを20~50個並列接続することで,当初の性能を確保することができた。 MOSFETを使用する上での大きな問題は,ドレイン-ソース間電圧に対して等価抵抗が一定で無いため,非線形現象が生じるため,波形時間パラメータが発生電圧に依存することが確認されたことである。この問題はMOSFETを20個以上大量並列することにより,解決することができた。 波形測定用分圧器に関しては,研究助成を受けて開始した初年度来の研究が実を結び,波高値度差0.01%以下,波頭長誤差0.2%以下で測定できる性能の160kV分圧器の製作に成功した。この性能は目下国内最高性能を有する500kV国家標準級分圧器の性能大きく凌駕するものである。電圧階級がまだ500kVの1/3程度であるが,倍の320kV分圧器の試作でも,優れた性能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の計画通り進んでいるとり分け分圧器の試作では,これまで報告された分圧器の性能を遙かに上回る性能の分圧器を製作することができた。この判定は,理由のないモノではなく,学会発表での質疑応答でも客観的に確認された。一方,校正器の製作に当たってはMODFETの並列度が当初想定したモノより高く無ければならないこと,及び代朁MOSFET採用の道をとらざるを得なくなり,この点についての研究の進展はやや計画より遅れている。ソフトウェアについては計画通り。以上の3点から総合的には計画通り進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は研究の最終年度である。このため以下の点に沿って研究を進めたい。 1.ソフトウェアの改良。ソフトウェアはほぼ完成の域に達しているが,ディジタル・レコーダとして,対象をテクトロニクスTDS5000シリーズのみを対象としている。しかし,安価で高性能である他の会社のディジタル・レコーダを使う機会も多くなりつつある。これを機会に,対象とするディジタル・レコーダの可能性を広げてみたい。 2.試作段階ではあるが,これまでの報告を遙かに超える性能の制動容量型分圧器の製作に成功した。この技術を更に生かし,320kV制動容量型分圧器の試作を行いたい。この技術が副産物的に生まれたものであるが,育てて行きたい。 3.低インピーダンス型校正器の性能を向上させたい。つまり,充電電圧と発生された波形の時間パラメータのとの間にある依存性の解消である。しかし,失敗しても同じ電圧での波形を発生する限りもんだいは生じない。 4.この機会に測定用ケーブルの磁気シールド効果について調査したい。現在は測定ケーブルの下に銅板を敷き,IGが発生する磁束がケーブルと地中の間を鎖交することによって生じる異常電圧を減少させているが,磁束が直接ケーブルに及ぼす電磁誘導を防止することにはなっていない。ケーブルを磁気シールドすることによりノイズを減少すさせる対策をとりたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の推進方策を推敲するため,ソフトウェア及びハードウェアの面から以下のような方面に研究費を使うことを計画している。 1.PC環境の整備及びFORTRAN,C++コンパイラーの更新,購入。 2.校正器改良の為,高耐圧・大電流MOSFETの購入。 3.320kV制動容量型分圧器試作のため,無誘導抵抗,ポリプロピレンコンデンサの購入。磁気シールド対策のため,フレキシブル鋼管。 4.成果報告のための旅費及び論文投稿費。
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