研究課題/領域番号 |
23560324
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
木村 高志 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60225042)
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キーワード | アモルファスカーボン / ダイヤモンドライクカーボン / パルスプラズマ / マグネトロンスパッタ / 誘導性結合プラズマ |
研究概要 |
本研究では、まず、高密度パルスマグネトロンスパッタリング放電プラズマを用いてダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜を作製し,放電プラズマの動作条件とDLC膜の特性との関係を調査した。パルスプラズマ形成時で30-40Aの放電電流(1平方センチメ-トルあたり1A程度の電流密度)が流れた場合、瞬時電力は20-30kWに達する。成膜した結果、ナノインデンターで測定したDLCの硬度は放電電流の増加に伴い増加して、放電電流が40Aのとき19GPaに達した。さらに、基板に負バイアスを印加し、膜硬度の炭素イオンの入射エネルギー依存性を調査した。その結果、-80V程度のバイアスを印加したときおよそ24GPaの高硬度な膜が作製できた。高密度パルスマグネトロンスパッタリング放電により高硬度なDLC膜の作製が実現でき、その硬度は基板バイアスにより制御可能であることがわかった。 次に、誘導性結合型高密度ハイドロカーボンプラズマによる機能性アモルファスカ-ボン成膜の実験的研究ならびにプラズマ特性に関する理論的研究を遂行した。1立方センチメ-トルあたり1W程度の電力密度、0.5-3Paの圧力条件下で,基板に負のパルス電圧を加えた場合、メタン/水素プラズマでは70nm/min、メタン/アセチレンプラズマでは180nm/minの成膜速度が実現でき,硬度10-12GPaのDLC膜が作製できた。この方式で比較的良質な膜の高速作製が期待できる。また、これらの条件下でのプラズマ特性をモデル解析した結果、プラズマ密度は1立方センチメ-トルあたり10の11乗程度であり、支配的なイオンはCH5イオン、C2Hイオン、C2H3イオンであり、支配的な活性種はH、C2H、CH3であると推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高密度パルスマグネトロンスパッタリング放電プラズマを用いて、20GPa前後の高硬度なダイヤモンドライクカーボン膜を作製した。また、この方法で作製したダイヤモンドライクカーボン膜の特性に関し、従来の直流マグネトロンスパッタ法に比べ優位性を見いだすことができた。また、誘導性結合型放電プラズマにより比較的高い硬度を有するアモルファスカ-ボンの高速成膜が実現できた。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ中の物理・化学プロセスを理解し、高密度パルスプラズマの機能性アモルファスカーボン成膜プロセスへの適用性を検討することを本研究の目的とする。その目的を達成するため以下の研究の推進をはかる。 1.機能化アモルファスカーボンを実現するため化学反応性の高い高密度パルスマグネトロンスパッタリング放電プラズマによる機能性アモルファスカ-ボン成膜 2.高速中性粒子等の基板入射による成膜ダメージの抑制するための電極構造を改良した高密度パルススパッタリング放電プラズマによるアモルファスカ-ボン成膜 3.誘導性結合型高密度放電プラズマによる機能性アモルファスカ-ボン成膜ならびにプラズマ特性に関する実験的ならびに理論的研究
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次年度の研究費の使用計画 |
プラズマ中のイオンならびにガス組成を推定するための理論的研究をさらに遂行するにあたり、数値計算ツールならびに 仕様を満たすコンピュータ環境の整備が必要である。そのため、数値計算ツールとコンピュータを購入予定である。 主要な消耗品は、放電プラズマ容器ならびに回路部品費(高耐圧高容量コンデンサ、IGBT、MOS-FET等)ならびに各種気体である。
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