研究課題/領域番号 |
23560325
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
小田 昭紀 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (70335090)
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キーワード | 低温プラズマ / 容量結合型プラズマ / 大気圧プラズマ / シミュレーション / ナノカーボン材料 / メタン |
研究概要 |
当該年度(平成24年度)では、前年度構築ならびに検証済みの放電プラズマモデルを用い、これまでカーボンナノチューブやダイヤモンドライクカーボン薄膜創製時に多く利用されている低気圧・高周波条件下でのメタンプラズマのシミュレーションを行い、実際の実験で設定される実験外部パラメータ(入力電力密度、ガス圧力、流量など)をパラメータに、メタンプラズマ基礎特性に及ぼす影響を調査した。その結果を以下にまとめる。(1)低気圧高周波CH4プラズマ中に存在する中性粒子の組成を解析した結果、原料ガスであるCH4以外の非ラジカル種(C2H4、H2、C3H8、C2H2、C2H6など)が無視し得ないほどに高密度でに存在する。このことは、原料ガス(CH4)がプラズマ空間へ導入されたとしても原料ガスが本プラズマ中で最も高密度な炭化水素ガス種と必ずしもならないことを示唆している。したがって、ラジカルやプラズマ形成などに大きな影響を及ぼす本プラズマ中の電子エネルギー分布は、炭化水素系ガスを原料ガスとした場合には原料ガスのみとの電子衝突では決定されず、原料ガスと主要な数多くのラジカル種や非ラジカル種からなる炭化水素系混合ガスとの電子衝突で決定される。(2)DLC超高速成膜に必要あるいは有効とされる高ガス圧力化と高入力電力密度化、およびそれらに伴うガス流量の増加がプラズマ気相反応に与える影響を、基板へ入射する炭素フラックス比(含有炭素数の重みを考慮した、基板へ入射するラジカルおよびイオンフラックスの比)の観点から検討した。高入力電力密度化に伴って、入射炭素フラックス比の大幅な増加が見られた。一方、高ガス圧力化と高ガス流量化に伴って、入射炭素フラックス比が減少する傾向が見られた。本結果から、ガス圧力の増加とガス流量の増加がDLC膜の軟質化に繋がる可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書作成段階で掲げた当該年度の目標をおおむね順調に進展させつつ、当該年度で得られた成果を直ちに学術論文としてまとめ、年度内に投稿できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、平成24年度での研究進展状況を鑑み、炭化水素ガス大気圧プラズマの解析へとシフトさせる。プラズマ生成条件の一つとしてのガス圧力(低気圧と大気圧)の違いは、放電プラズマ生成の安定性や、本プラズマ中で生成されるナノカーボン創製に大きく寄与する炭素を多く含んだ化学的活性種やイオン種の生成頻度に大きく影響を及ぼす。そのため、このことを放電プラズマ基礎特性のレベルで調査を行いつつ、安定に大気圧プラズマの生成が可能となる条件範囲の割り出しや、上記化学的活性種やイオン種を効率よく生成できる条件の割り出しを行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(平成25年度)は、本研究課題の総決算の年度となる。そのため、次年度の研究費の使用計画としては、研究室学生などに研究課題のシミュレーション結果を適切に処理してもらうための費用、これまで得られた成果を学会などで発表するための費用、そして学術論文へとまとめるための費用などに適切かつ効率的に使用する予定である。
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