当該年度(平成25年度)においては,前年度行ったナノカーボン材料創製用低気圧ハイドロカーボンプラズマのシミュレーションから得られた知見を活かし,大気圧ハイドロカーボンプラズマに適用すべく検討を行った.具体的には,大気圧ハイドロカーボンプラズマのモデル構築のために必須である本プラズマ中での粒子種や化学反応過程,そしてこれら粒子種の輸送係数などを、本プラズマに関する既発表論文などを調査し正確に計算可能な基礎データの取得に努めた.その上で,既存のシミュレーションコードに反映させ,各種プラズマ生成条件(入力電力密度,駆動周波数,流量,容器サイズ)の観点から本プラズマの基礎特性を調査した.その結果,大気圧という高ガス圧力であるがゆえに,ナノカーボン材料創製時に要請される「均一なプラズマ生成」が,ハイドロカーボンガスのみでは実現が困難であることがわかった.これは,ハイドロカーボンガスのみでの放電における電子生成がある電子温度(換算電界)において急激に起こるという性質と,放電時のガス温度上昇が先の急激な電子生成を助長するように働くからであることが調査の結果判明した.よって,ハイドロカーボンガスでの大面積・均一な放電プラズマ生成のためには,希釈ガスとして熱伝導率の高いヘリウムを大量に導入しつつ,そこにハイドロカーボンガスを少量混合するなどの工夫が必要であろうことが示唆された.本研究課題で得られた成果から,大気圧環境下で大面積にかつ均一なハイドロカーボンプラズマ生成にあたっての問題点を明確化でき,その上で改善策を提示できた.今後は,本科研費課題から得られた知見を活かしつつ,プラズマ生成実験や計測を交えて更なる検討が必要である.
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