研究課題/領域番号 |
23560329
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
造賀 芳文 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40294532)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 電力工学 / マイクログリッド / 太陽電池 / 風力 / 電気自動車 |
研究概要 |
本研究は,次世代電力系統「スマートグリッド」実現の一翼を担う可能性のある小規模自律系統(マイクログリッド)について,柔軟な制御を実現する機能を"オンデマンド需給制御"と称し,その具体的なプロトタイプシステムを構築・検証することを目的としている。平成23年度は,Matlab/Simulinkを使用し,最も重要な,基盤となるマイクログリッド要素モデルの作成・構築を目指して研究を進めてきた。 すでに,ある程度構築済みであったガスエンジン発電機,ディーゼルエンジン発電機,マイクロガスタービンモデルなどに加え,新たに太陽光発電や風力発電などの不確定電源モデル,電気自動車の充電モデルなどを作成した。また,文献などを参考に作成した各モデルの動作確認を行い,ある程度の精度で模擬できていることを確認した。太陽光発電および風力発電についてはモデルに関する文献がある程度存在しており,その結果と照らし合わせることで確認は可能であったが,電気自動車についてはあまり文献が存在せず,企業の協力を得て動作確認を行った。 次に,現時点までに構築した上記要素モデルを用い,現在実施されているある実証試験設備を参考に小規模自律系統全体のモデル化を行い,まずはその参考系統と同様の規模・電源構成を仮定し,実際にシミュレーション計算を行った。その結果,不確定電源(太陽光,風力)の出力変動の模擬,およびその変動を他電源にて吸収,調整する機能の模擬がいずれも実現できていることが確認できた。 最終的に,その系統モデルを対象に,最も簡単なオンデマンド需給制御システムのプロトタイプを構築した。仮定した条件やモデル自体の検証は今後とも継続的に行う必要があると思われるが,事前に想定した事象をある程度模擬することができたと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,次世代電力系統「スマートグリッド」実現の一翼を担う可能性のある小規模自律系統について,柔軟な制御を実現する機能を"オンデマンド需給制御"と称し,その具体的なプロトタイプシステムを構築・検証することである。平成23年度は,小規模自律系統を構成する要素モデルの再構築を主たる目的としており,(1)Matlab/Simulinkを使用したモデルの作成,(2)各モデルの動作確認および制度評価の実施,の2つを計画していた。 先の「研究実績の概要」で一部述べたように,(1)すでに以前の研究で開発済みであった電源モデルに加え,新しく太陽光発電,風力発電などの不確定電源についても文献を参考にモデル化を行い,(2)動作検証および制度評価を行った。電気自動車の充電モデルについても文献を参考にモデル化を行ったが,新しい要素であることもあって十分な情報が得られなかったため,実際に企業(自動車会社)にご協力をいただき,動作検証および精度評価を行った。 今後も各モデルの改善,精度評価などは引き続き行っていく必要があると思われるが,上記計画については概ね順調に遂行することができたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度,ほぼ計画どおり最低限必要な要素モデルの作成が終わり,小規模自律系統の全体モデル化も一例として構築することができた。 よって平成24年度は,当初の計画どおり「モデルを用いたシミュレーション実験と現象の理論的考察」について研究を進める予定である。具体的には,(3)開発したモデルにて小規模独立系統内で生じる現象を実験的に検討し,(4)その現象の理論的考察を行いつつ,(5)これまでの研究成果を国内外にて発表・意見聴取を行うこととしている。 特に,提案システムの重要な機能として,不確定電源の出力変動をいかに観測,同定,予測し,オンデマンドで制御をかけるかという点が主要な研究テーマになるかと考えられる。この点については,(まだ学会発表などは行っていないが)平成23年度中も若干の考察を行い,問題点も徐々に明らかとなってきている。平成24年度は,この点について重点的に研究を進める予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上記「今後の研究の推進方策」にて述べたように,平成24年度も引き続きモデルの改善・精度評価を行いつつ,不確定電源の出力変動についての考察も進めていく予定である。よって,「物品費」としてMatlab/Simulinkなどのソフトウェアライセンス費用を計上している。 また,平成24年度は学会発表などを通じて研究テーマについての意見交換の機会を増やす必要があり,国内外への「旅費」を計上させていただいた。なお,研究が順調に進めば早い段階での論文投稿も考えており,その準備のための費用を「その他」として計上している。
|