研究課題/領域番号 |
23560329
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
造賀 芳文 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40294532)
|
キーワード | 電力工学 / マイクログリッド / 太陽電池 / 風力 / 電気自動車 |
研究概要 |
本研究は,次世代電力系統「スマートグリッド」実現の一翼を担う可能性のある小規模な自律型電力系統(マイクログリッド)について,柔軟な制御を実現する機能を「オンデマンド需給制御」と称し,そのプロトタイプシステムを構築・検証することを目的としている。これは,自然環境によって出力が大きく変動する太陽光発電,風力発電などの「出力変動電源」が系統周波数に悪影響を与えることを踏まえ,オンラインでその出力変動を捉え,行き過ぎた変動があった場合にはオンデマンドでそれらの出力を抑制,制御することが主な役割である。 平成23年度は,Matlab/Simulinkを使用し,基盤となる各構成要素モデルの作成・システム全体の試作を行った。要素モデルとしては,すでに構築済みであったモデルに加え,新しく太陽光発電,風力発電モデルおよび電気自動車の充電モデルを作成し,動作検証を行った。また,小規模系統のモデルとしては,ある離島系統を一例としてモデル化した。全体として出力変動電源の模擬,およびその変動を他電源にて吸収,調整する機能の模擬がいずれも実現されていることが確認できた。 平成24年度は計画どおり,前年度に試作したモデル群およびシステムのプロトタイプを用いてシミュレーション実験と現象の考察を行った。このシステムの最も重要な機能は,オンラインで観測する出力変動データから,いかに出力抑制,制御を実施するかということである。よって,その基準についてある「評価指標」を考え,その計算方法および抑制・制御方法について検討を行った。また,従来型の発電機に加えて,電気自動車の充電制御を用いる周波数変動抑制方法およびその効果についても検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,構築したモデルを用いたシミュレーション実験と現象の理論的考察が目標であり,(3)開発したモデルを用いてマイクログリッド内で生じる現象を実験的に検討,(4)現象の理論的考察,(5)ここまでの研究成果の国内での学会発表と意見聴取の3点を計画していた。 先の「研究実績の概要」で述べたように,本研究は,オンラインで観測する出力変動データからいかに出力抑制,制御を実施するかが重要であるので,その基準について,ある「評価指標」の提案とその計算方法,およびその指標を活用した抑制・制御方法について検討を行った。そのためにまず,実際に典型的な出力変動データを適用し,例題系統モデルにてどの程度の周波数変動が観測されるのか,また,その変動を既存の電源のみでどの程度吸収,制御できるかについて数値シミュレーション実験を行った。次に,その結果からどの程度の詳細度および時間スパンにて出力変動を観測すべきか,その観測情報をいかに指標に反映させるべきかの考察も行った。結果,現段階では適切であると思われる指標を提案することができ,その指標を組み込んだプロトタイプシステムにて,適切に出力変動電源の抑制,制御が行えていることをシミュレーションにより確認した。 さらに,上記の考察と並行して,従来型の既存電源に加えて,電気自動車の充電制御を用いる周波数変動抑制方法およびその効果についても検討を行った。電気自動車は所有者の意志によって自由に移動し,常に系統に連系されているわけではないということが問題であるが,オンデマンド需給制御システムは,このような場合に対しても柔軟に対応できることを確認し,あわせてその充電制御方法についても考察を行った。 上記内容について,平成24年度は国内学会での発表を2件,国際会議での発表を1件行った。以上のことから,本研究は概ね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,ほぼ計画どおりに実験的な検討を行い,現象の理論的考察に基づく評価指標の提案,およびそれらを組み込んだシステムのプロトタイプによる検証を行った。また,電気自動車の充電制御についても種々の考察をあわせて行うことができた。しかしながら,評価指標についてはまだ改良の余地があると考えており,また電気自動車の取り扱いについても,ユーザの利便性などは基本的な部分に留まっていることから,さらに改善が必要である。 よって,平成25年度は新しい制御方策の提案が目標であって,項目としては(6)新しい制御法の開発および検証,(7)研究成果の取りまとめと国内外での学会発表などを計画しているが,その中で,上記課題をあわせて検討する予定である。 最も基本的かつ重要なデータである出力変動の特性について,現状では典型的なデータを用いてはいるがあくまでも一例に過ぎず,普遍的なデータではない可能性がある。しかし,そのようなデータを本研究範囲内で整備することは困難であることも事実である。よって,これについては,現在ざまざまに実施されている実証試験の報告書などを通じ,コンセンサスの取れた特性を持つデータを入手することで評価指標を改良していきたいと考えている。それらを反映し,かつ電気自動車の取り扱いについてもさらに改善したうえで,新しい制御方策の提案としたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上記,「今後の研究の推進方策」でも述べたように,平成25年度は新しい制御法の開発・検証,および研究成果の取りまとめ・発表を計画している。よって,引き続き「物品費として」Matlab/Simulinkなどのソフトウェアライセンス費用を計上している。また,最終年度であり,国内学会および国際会議での発表を行う必要があることから,そのための「旅費」を計上させていただいた。また,最終的に研究の取りまとめを行って論文投稿を目指すことから,そのための費用を「その他」として,あわせて計上している。
|