研究課題/領域番号 |
23560331
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
佐久川 貴志 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (40398186)
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キーワード | Pulsed Power / Bioelectrics |
研究概要 |
・水環境浄化研究のうち、アオコと呼ばれる有害藍藻類(ミクロキスティス)については前年度までの研究では水中ストリーマ放電処理が効果的であることが得られたが、本年度はストリーマ放電のどの物理的あるいは化学的作用が原因であるかを追求した。その結果水中衝撃波によるミクロキスティスのガス泡消滅がもっとも効果的にミクロキスティスを不活化していることを確かめた。 ・装置開発としては高電圧高速キャパシター充電装置の開発を行った。この装置はマイクロプロセッサ(PIC)を用いて充電電圧をモニタリングしながら高速半導体スイッチング素子(MOSFET)を用いたインバータ制御によって充電電圧の安定性を向上させた。それらの成果は国際会議(4th Euro-Asian Pulsed Power Conference, 19th International Conference on High-Power Particle Beams)で発表し、また論文誌(電気学会英文誌)に投稿した。 ・その他の装置開発としては高周波1石チョッパ方式充電回路を考案し、制御回路にマイクロプロセッサ(FPGA)を用いて小型ながら高速高電圧充電可能な充電器を開発した。 ・基礎研究としてはマイクロプラズマジェットによる大腸菌殺菌の効果検証を行い、実験的に殺菌効果を実証した。また、水中放電による酸化作用のあるH2O2の生成と吸光法による生成量計測を行った。水面での高繰り返し放電により、H2O2の生成量向上に成功した。この結果は電気学会全国大会で発表した。水中での高繰り返しパルスパワー印加による放電形態の観察を高速度フレーミングカメラで行い、その成果を国際会議で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・高繰り返し水中放電プラズマのメカニズム解明においては水中ストリーマ状放電と高繰り返し水中放電におけるストリーマ状放電からボール状バブル内放電へのプラズマの形態変化についてパルス繰り返し周波数のスレッシュレベルについて液体媒質の導電率が大きく関与しているのを実験的に確かめた。 ・藍藻類処理実験に関しては前年度から加速的に進展しており藍藻類(ミクロキスティス)の細胞内変改による不活化の原因が高速立ち上がりの衝撃波が支配的であることが確認できた。フィールド試験においても既に実用的な装置を開発し、実際のダムにおいて水質(濁度、クロロフィル濃度、pH、導電率、溶存酸素濃度、水温)調査し、濁度とクロロフィル濃度を激減させることができた。そのためこれらの研究と装置開発が早めに実用化のフェーズに入ってきた。装置開発においては電力源を太陽光発電(約500W) で賄い、フィールド試験(36平方メートルのエリアをほぼ20分で処理)で省エネルギー化を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
・水中放電を用いた水環境改善の応用研究は当初予定以上の成果が得られたので25年度は高繰り返しパルスパワーをもちいた気体放電の研究にシフトさせる。 ・パルスパワー発生装置開発としては短パルス化(高速化)と高繰り返し化を行っていく。アプリケーションとしてはオゾン生成、化学活性種生成(OHラジカルなど)を行っていく。 ・水中放電による藍藻類処理はフィールド試験の継続と実用化のための改良や耐久性の検証を行う。時期を見てプレス発表を行う予定。 ・研究が加速し、応用研究としてプラズマの形態制御や生成物の計測が重要になってきたので計測技術(プラズマ観測、分光分析など)の向上を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年の研究費において残額(次年度使用額)が77,986円発生したがこれは購入物品(新型半導体)の販売時期が遅くなったためでH25年度初めには使用予定である。今年度支給予定している研究経費800,000円は物品費(電気電子部品、材料など)と旅費、その他(外注費など)で執行する予定である。
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