海浜の風力発電施設や原子力発電施設に対する雷防護において、海面落雷による接地雷(地層経由の雷サージ)侵入を抑制し、発電施設の電力調整機器等で発生する雷事故軽減を目的として、モデル化放電ギャップに対する標準雷インパルス放電実験を行った結果、次の結論を得た。(1)海浜発電施設の建築基礎材(モルタル)を固相、KCl塩水で模擬した海水を液相として液相経由の固相ギャップ放電を行った。乾燥固相単体に比べて放電しきい値電圧は1/3に低下し、かつ電圧および電流波形は単極性を示すことから、侵入接地雷対策には単極性SPDが有効と考えられる。(2)実際の複合ギャップを液相(模擬海水)-固相(コンクリート)-気相(高圧空気)で構成し、導入空気圧増加による放電抑制実験を行った。5気圧までの加圧空気条件下では、気相と液相との圧縮率の相違により固相表面への沿面放電が増加する一方、放電電流振幅は20%減少し、雷サージ電流の侵入が抑制されることが分かった。(3)大規模発電施設に当該研究手法を適用する場合、施設内電力機器系統に等電位化を目的として接続されるコンクリート接地場所の接地幹線周辺に局所高圧気相領域(LHGR)を介在させると、海水浸潤コンクリート経由の雷電流侵入が軽減されると考えられる。その際の課題として、等電位化によるLPZ (Lightning Protection Zone)の設計区分において、最終基幹接地から遡及してLHGRを設置すべきLPZを最大抑制効果の観点から決定することが重要であり、そのためのシミュレーション等による事前検討が必要となる。
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