研究課題/領域番号 |
23560340
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
谷内 利明 東京理科大学, 工学部, 教授 (90349845)
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キーワード | 太陽光発電 / 太陽エネルギーの利用向上 / 再生可能エネルギー / 植物の葉序 / フィボナッチ数列 |
研究概要 |
太陽電池セル当たりの発電量を最大にする従来の太陽光発電モジュールに替えて、設置面積当たりの発電量を最大にする、すなわち太陽エネルギーを最大限に利用できるモジュール構成として3次元太陽光発電モジュールが期待されている。本研究では、フィボナッチ数列を基にした植物の葉序に倣った、樹木状に太陽電池セルを配置する3次元太陽光発電モジュール(Fibonacci Number Photovoltaic Module: FPM)を提案し、その発電特性を実証実験とシミュレーションにより明らかにしている。 シミュレーションでは、FPMを構成する太陽電池セル同士の影に加えて、本年度は支柱の影も考慮した発電量シミュレーション手法を検討した。その結果、太陽電池セル同士の影による発電量低下が20%生じる1/3葉序2段構成のFPMにおいて、セル長さの1/5の支柱半径を想定すると、支柱の影を加えることによる発電量の低下は約1%と極めて小さいことが示された。また実証実験では、昨年度に続けて正方形単結晶Si太陽電池パネルを用いた1/3葉序、および長方形単結晶Si太陽電池パネルを用いた3/8葉序疑似FPMを製作し、その発電特性の測定を行い以下の結果を得た。(1)1/3葉序2段構成の疑似FPMでは、1段目の発電量は平面型の90%、2段構成合計で平面型の150%とシミュレーションで得た結果とほぼ一致する。(2) 1/3葉序2段構成の疑似FPMでは、2段目の第一セル(北方向)が1日を通して影による出力低下が顕著である。 (3)長方形太陽電池パネルを用いた3/8葉序疑似FPMでは、各パネルが長さ方向に8セル直列接続となっているため、上部パネルおよび支柱の影の影響を受けやすい。 上記の研究結果等については、雑誌論文2件、国際会議発表2件、国内学会発表2件で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FPMの実現に当たっては以下の技術課題を解決する必要がある。(1)FPMの葉序、形状、寸法、太陽電池セル間隔等と発電量との関係を体系的に明らかにすること。(2)FPMの設置においては、その段数や設置間隔等の最適化を図ると共に、上段と下段の太陽光スペクトルにあった太陽電池を選定し、いわゆるタンデム型モジュールを開発すること。(3)FPMを構成する各太陽電池セルの発電特性に応じた出力回路を開発すること。(4)支持材料や接続法等の実装条件を明らかにすること。 平成24年度は、(1)、(3)、 (4)の課題に取り組み、上記研究実績の概要で述べたようにほぼ当初計画通りの結果を得ている。なお、(2)のタンデム型モジュールについての検討は基礎データの取得に時間を要し検討がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は最終年度に当たり、開発した発電量シミュレーション手法を用いてFPMの各種実装条件と発電量の関係をさらに明らかにすると共に、実証実験では、日射条件が各々異なる各太陽電池セルパネルに合わせた負荷条件に設定できる出力回路の開発や、タンデム型モジュールの実現に向けてのコンセプトの明確化を加速する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画通り、Si太陽電池パネル、出力回路部品等のFPM構成材料や国際会議等への旅費の費用に使用する。
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