研究概要 |
水を電気分解して得られた水素分子をポリシラン金属触媒を用いてさらに水素原子に分解した。それら水素原子を各種キノン分子に対して付加した際の効率は、分子の構造に依存して変化し、効率の高い分子に対しては約95%であった。分子に対する水素原子の付加の有無やその比率に関しては、1H-NMR測定により評価を行った。水素原子付加実験においては、使用カラムのサイズと送液ポンプの性能等を考慮して溶液流量は0.2 ml/minで固定し、触媒で分解させるH2流量は5.6 ml/min(= 0.25 mmol/min)とした。対象とする分子のベンゼン環以外の全ての二重結合に水素が付加すると仮定して必要なH2量を計算し、H2流量 5.6ml/minに見合った溶液濃度とした。 今回、触媒により分解生成させた水素の添加を試みた分子は、CoQ10、1,4-Benzoquinone、2-Methyl-1,4-benzoquinone、2-Methoxy-1,4-benzoquinone、2,6-Dimethyl-1,4-benzoquinone、2,6-Dimethoxy-1,4-benzoquinone、Tetramethyl-1,4-benzoquinone、2,3-Dimethoxy-5-methyl-1,4-benzoquinone、BQQ・2Naである。例えば、CoQ10においては、水素原子による還元前にはミカン色であったものが、実験後には無色に変化した。NMRの結果と合わせて考えると、これはカルボニル基が水添された化合物が生成したことを意味する。すなわち、ポリシラン金属触媒により水素分子が分解され生成した水素原子がキノン分子に付加された。また、直鎖の末端が還元した場合のメチル基も見られたことから、直鎖部分の還元も一部進行していることが示された。
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