研究課題
本研究の目的は,パルスパワー装置を用いた仮想陰極発振器で発生する短パルス・大電力のマイクロ波を用いた細菌に照射し,その滅菌効果について検証することである。そのために,まず実験で使用する同軸マルクス装置の設計および製作を行った。同軸マルクス装置は,セラミックコンデンサを直並列に接続した耐圧60kVのコンデンサユニットを6段接続して,最大出力を-360kVとした。作製に先立ち本同軸マルクス装置の電気的等価回路を作成しSPICEシミュレータを用いてその動作解析を行った結果,負荷抵抗を15Ωとした場合の出力電圧は約220kV,出力電流は約17kA,出力パルス幅は半値幅で約100nsと計算された。次に,仮想陰極発振器における大電力マイクロ波の発生条件を理論式を用いて算出した。その結果,ダイオード電圧が100~300kVにおけるマイクロ波の発生条件は,ギャップ長/陰極半径の値が0.2~0.25の範囲であることがわかった。陰極半径を10mmとした場合,発生するマイクロ波の周波数は約18GHzと計算された。作製した同軸マルクス装置にポイントピンチダイオードを接続しマイクロ波の発生実験を行った。しかし,マイクロ波発振は,ダイオードギャップ長やダイオード室の真空度等の様々なパラメータに依存することから,現状では安定したマイクロ波発振を得ることができなかった。マイクロ波をバイオロジカルインジケータ(BI)に照射し滅菌効果について検証したが,マイクロ波の発振が安定していないこともあり,マイクロ波による滅菌効果については検証できなかった。今後は,ダイオード室内の真空度の制御,ダイオードギャップ長を0.1mm単位で設定可能な構造に変更するなどマイクロ波の発生を安定させる工夫を行う。安定したマイクロ波発生が可能になったら,BIにマイクロ波を複数回照射することで滅菌効果の検証を行い,本研究の最終目的を達成する予定である。
すべて 2013 その他
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National Institute for Fusion Science
巻: NIFS-PROC-94 ページ: 7-11
ADVANCES IN APPLIED PLASMA SCIENCE
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