前年度において、Ni/Si界面に濃度勾配を持ったNi拡散層を作り付けることによって、高温形成相(750°)であるNiSi2相の低温(400°)での形成を新たに見つけることができた。これについて、さらに詳細な検討を行った。電子顕微鏡観察により、Ni拡散層のNi側で均一なNiSiが、拡散層のSi側にSi(100)にエピ成長するNiSi2相に特有な{111}ファセットを有する逆ピラミッド型の離散的な形成相が見られた。このことから、Ni拡散層のNi-rich組成側では、2元合金相図における、共晶合金組成(41%)近傍のアモルファス合金相からNiSi相が、Si-rich組成側では、同様に(59%)近傍のアモルファス合金相からNiSi2相の凝縮が起こっているものと考えられた。このように、Si-richなNi-Si合金組成の形成がNiSi2相の低温形成に必要な過程であると思われるので、薄いSiO2層を残したSi基板上にNiを350°で堆積させる実験を計画した。SiO2層の存在は、NiのSi基板への拡散を制限するように働くので、Si表面にSi-richな合金相を作ることが期待される。実験の結果、350°においてSi基板にNiを堆積中に、Si(100)にエピ成長するNiSi2相に特有な{111}ファセットを有する逆ピラミッド型の離散的な形成相が見られた。このことからも、NiSi2相の低音形成はSi-richなNi-Si合金を上手に形成することにより、350°~400°という、十分低温においても形成可能であることが知られた。
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