研究課題/領域番号 |
23560357
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
尾崎 俊二 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80302454)
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キーワード | 多元化合物半導体結晶成長 |
研究概要 |
前年度に引き続き、Cu2ZnSnSe4半導体バルク結晶を垂直ブリッジマン法により育成した。まず、純度99.9999%のCu、Zn、Sn、Seをモル比2:1:1:4の割合(ストイキオメトリー)で秤量し、カーボンコートを施した石英管に真空封入することでアンプルを作製した。次に作製したアンプルは、45度に傾斜させた管状電気炉に挿入し、アンプルを回転(~20 rpm)させながら徐々に昇温させることで、材料を均一に溶融するという試みを行った。これは昨年度行った結晶成長では、結晶の一部に非晶質成分を含むという問題が発生したためである。このようにして均一に溶融した材料(アンプル)を縦型電気炉に設置し、温度勾配を有する電気炉内を~1 cm/dayの速度で降下させることで、Cu2ZnSnSe4結晶を育成した。このようにして得られた結晶の一部を粉末にしてX線回折測定を行った。その結果、Cu2Se, ZnSeといった他の材料の混在の無い、ケステライト構造を有するCu2ZnSnSe4結晶であることがわかった。 次に結晶の一部を切り出し、厚さ0.05 mmに両面鏡面研磨し、光吸収測定を行った。昨年度に育成した結晶では近赤外光はまったく透過しなかったが、今回育成した結晶では、アニール処理を施すことなく、近赤外光の透過が観測できた。光吸収測定を行った結果、Cu2ZnSnSe4半導体の室温(T=300 K)におけるバンドギャップエネルギー(Eg)は1.02 eVであることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において、平成24年度ではCu2ZnSnSe4半導体バルク結晶の育成を行い、さらにその結晶を使用して光学測定を行うこととしていたが、その目的はおおむね達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては、得られた結晶を使用して、さらに光学測定を行うことで、電子エネルギーバンド構造を明らかにする。具体的には、光吸収測定、変調分光測定、フォトルミネッセンス測定を行う。また、エネルギーバンド計算も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度では研究費を当初の予定通り執行した結果端数が生じたが、その端数については平成25年度予算とあわせて使用する予定である。 平成25年度においては、平成24年度に行った結晶育成方法が有効であることがわかったため、その実験に必要となる管状電気炉および温度コントローラの購入を予定している。また、研究成果を発表するために、研究費の一部を旅費として使用する予定である。
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