研究概要 |
本年度はVI族元素を硫黄(S)とした、Cu2ZnSnS4半導体バルク結晶の育成を行った。まず、純度99.9999%のCu、Zn、Sn、Sを2:1:1:4のモル比(ストイキオメトリー)で秤量し、カーボンコートを施した石英管内に真空封入することでアンプルを作製した。次に作製したアンプルを2ゾーン横型電気炉内に挿入し、試料の硫黄化を行った。これは、Sの蒸気圧が高いためにアンプルが破裂するのを防ぐためである。硫黄化した試料を再度石英管内に真空封入し、アンプルを縦型電気炉に設置する。温度勾配を有する縦型電気炉内を約1 cm/dayの速度で降下させることで、Cu2ZnSnS4結晶を育成した。このようにして得られた結晶の一部を粉末にしてX線回折測定を行った。その結果、Cu2S, ZnSといった他の化合物の混在の無い、スタンナイトまたはケステライト構造を有するCu2ZnSnS4結晶であることがわかった。 次に結晶の一部を切り出し、厚さ約0.06 mmに両面鏡面研磨した試料を使用して、光吸収測定を行った。その結果、Cu2ZnSnS4半導体の室温におけるバンドギャップエネルギーは1.4 eVであることがわかった。また、温度変調反射測定を行った結果、いくつかの臨界点構造を反映したスペクトルが得られた。バンド計算及び誘電関数の計算結果と比較することにより、ブリルアンゾーンの臨界点構造を明らかにした。 これらの研究成果は、学会にて発表を行った。さらに、関連するカルコパイライト構造化合物半導体についても同様に結晶成長を行い、その光学特性を調べた。これらの研究成果ついても、学会において発表を行い、学術論文にて公表した。
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