研究概要 |
本研究では、電気的中性面であるGaAs(110)面における原子平坦表面・ヘテロ界面制御技術として、「成長中断in-situアニール法」に注目し、その表面平坦化過程の物理的メカニズムの解明と、GaAs(110)基板の結晶成長表面への適用を目的に推進してきた。 平成25年度は、前年度まで実施してきたGaAs(001)基板のへき開で形成されるへき開(110)面上での成長中断in-situアニール法による表面平坦化研究で得られた知見を基に、GaAs(110)基板上へのMBE結晶成長とその表面での成長中断アニール法を試みた。MBE結晶成長は代表者の所属する研究室所有の装置を使用し、同所属協力研究者の協力のもと進めた。 GaAs MBE成長では、結晶成長前に基板表面の酸化膜除去プロセスをMBE装置中で行う。この表面酸化膜除去プロセスをGaAs(110)基板にて行ったところ、多数(>10個/um^2)の面内方向数十nm, 深さ約10nmサイズのピット構造が基板表面に形成されてしまうことがわかった。最適MBE成長条件の許容範囲の狭い(110)面では、この表面へ結晶成長を行うと、数umサイズのファセット構造が形成されてしまい、成長中断アニール法による平坦化効果を活用できないという問題に直面した。そこで、まず(110)基板での表面酸化膜除去プロセスの改善から行うこととした。今年度は、このプロセス改善によりピット構造の無い平坦性の高い酸化膜除去後表面を形成し、その表面にGaAs(110)層をMBE成長するところまで達成することができた。しかし、成長中断アニール実験を実施するまでは至らなかった。すでに成長中断アニール実験の準備は整えられており、本手法による原子平坦表面の形成を引き続き実施し、原子平坦界面からなる量子構造の作製とその光学特性評価へと展開していく。
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