研究課題/領域番号 |
23560360
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
蓮見 真彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60261153)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ソーラーセル / シリコン / 水蒸気熱処理 / ライフタイム |
研究概要 |
水蒸気熱処理技術を用いて結晶性シリコンソーラーセル素子内に存在する欠陥を効率よく低減し、高い光・電力変換効率を安定して低コストに実現するプロセス技術を開発することを目的とし、平成23年度はシリコン基板に対する水蒸気熱処理前後の少数キャリア実効ライフタイムの精密測定技術の確立、並びにシリコン表面パッシベーションプロセス技術について主に検討した。我々が開発した試料に光照射しつつマイクロ波フリーキャリア吸収測定を行い、試料の少数キャリア実効ライフタイムを評価する装置に、新たに精密XYステージを導入して6インチ試料の評価を可能とした。また、水蒸気熱処理による欠陥低減がソーラーセルのどこに効いているのかを、少数キャリア実効ライフタイムを基準として定量的に解析することを目的として照射光光源の多色化を実現した。試料への光侵入長の変調により、シリコン基板表面、およびバルク中の少数キャリア再結合を詳細に調べることが可能となった。これらの装置改造に伴う研究成果は、平成24年春季応用物理学関係連合講演会等で発表した。また、結晶性シリコンソーラーセルの特性に重要な影響を与えるシリコン基板表面のパッシベーション状態について知見を得ることを目的とし、アモルファスシリコン膜成膜、リモートプラズマ酸化、アルミナ膜成膜をそれぞれ施したシリコン基板に対して、水蒸気熱処理を適用することによる表面パッシベーション状態の変化について検討した。これらの研究成果は18th International Workshop on Active Matrix Flat Panel Displays等で発表した。さらに、多結晶シリコンソーラーセルに対して水蒸気熱処理技術を適用し、変換効率の向上を見出した。平成24年度以降は水蒸気熱処理によるソーラーセル欠陥低減メカニズムの解明に向け、さらなる検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿っておおむね順調に進展している。単結晶シリコン基板を用いたパッシベーション膜の形成および光照射マイクロ波吸収測定装置を用いた少数キャリア実効ライフタイムの解析は同装置の改造に伴う精度・実験効率の向上等により、平成23年度実施計画を上回る進捗を得ている。pn接合を形成したシリコン基板に対する水蒸気熱処理の適用についても実施計画に沿った検討を着実に進めているが、現時点では具体的な研究実績にまで結実していない。
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今後の研究の推進方策 |
単結晶シリコン基板上にアモルファスシリコン膜、リモートプラズマ酸化膜、アルミナ膜をそれぞれ形成した後、水蒸気熱処理を施すことによってシリコン基板表面のパッシベーションを実現するプロセスについて、平成23年度に改良したマイクロ波フリーキャリア吸収測定装置を用いて詳細な解析評価を実施する。さらに、水蒸気熱処理条件と暗状態および光照射下の電気特性の関係について評価する。これらの結果を基に、水蒸気熱処理による欠陥低減メカニズムに迫るとともに、キャリア再結合を低減する最適条件を見出す。さらに、シリコン基板面内での少数キャリア実効ライフタイム、表面再結合速度の分布についても評価し、プロセス技術としての可能性について検討する。pn接合試料に対しても、マイクロ波フリーキャリア吸収測定装置を用いた少数キャリア実効ライフタイム解析について検討し知見を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度支払請求額2,100,000円に対して実支出額は1,925,815円。次年度使用額として174,185円が生じた。これは、学内業務との兼ね合いのため、一部の研究成果発表を海外の国際会議への投稿から、国内で開催される別の会議に変更したことによる旅費の残額がその多くを占める。次年度使用額については、成果発表のための旅費として充当するとともに、その一部を平成23年度にはやや窮屈であったシリコン基板、薬品、水蒸気熱処理装置消耗品等の物品費、並びに前年度と同等の実験補助を活用するための学生アルバイト雇用の人件費・謝金として充当し、平成24年度配分額とあわせて使用する。
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