研究課題/領域番号 |
23560360
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
蓮見 真彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60261153)
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キーワード | ソーラーセル / シリコン / 水蒸気熱処理 / 少数キャリアライフタイム |
研究概要 |
本研究は水蒸気熱処理技術を用いてソーラーセル素子内の欠陥を効率よく低減し、高い光・電力変換効率を安定して実現する低コストなプロセス技術の研究・開発を目的とする。 実効少数キャリアライフタイムの測定評価・解析を目的として開発したマイクロ波吸収測定装置に、精密XYステージを取り付ける等の改造を施した。これを受け、大面積シリコン基板の面内ライフタイム分布の精密測定が可能になるとともに、測定の効率化が図られた。新装置を用いて、単結晶シリコン基板に対するプラズマ・プロセスに伴うキャリア再結合欠陥の生成およびマイクロ波アニーリングによる生成された欠陥の回復について詳細な検討を行った。本研究の成果はThe 19th International Workshop on Active Matrix Flat Panel Displays and Devicesで報告した。さらに、Jpn. J. Appl. Phys誌に原著論文が掲載された。 水蒸気熱処理がアモルファスシリコンソーラーセルの光・電力効率の改善に有効であることを見出した。アモルファスシリコンソーラーセルには欠陥が多く光誘起キャリアの再結合を誘発する問題があり、安価で簡便な効率改善技術が期待される。本研究の成果はJournal of Non-Crystalline Solids誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画に沿っておおむね順調に進展している。平成23年度に光照射マイクロ波吸収測定装置への精密XYステージ取り付け等の改造を実施した。その結果、大面積シリコン基板の一括評価が可能になり、実効少数キャリアライフタイムの測定・解析の効率化が図られた。 さらに、当初計画では平成25年度に実施予定であったアモルファスシリコンソーラーセルへの水蒸気熱処理を前倒して今年度実施した。その結果、単結晶・多結晶シリコンソーラーセルと同様に、水蒸気熱処理がアモルファスシリコンソーラーセルの変換効率改善に対しても有効であることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に継続してシリコン基板表面のパッシベーションに関する検討を行う。単結晶シリコン基板上に形成したアモルファスシリコン膜、リモートプラズマ酸化膜、アルミナ薄膜に対して水蒸気熱処理を施し、表面パッシベーション状態の変化を観測する。さらに、水蒸気熱処理条件と暗状態および光照射下の電気特性との関連について評価する。これらの結果を基に、水蒸気熱処理によるシリコン基板およびパッシベーション膜の欠陥低減メカニズムに迫るとともに、キャリア再結合を低減する最適条件を見出す。さらに、シリコン基板面内での少数キャリア実効ライフタイム、表面再結合速度の分布を評価し、プロセス技術としての可能性について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度未使用額に平成24年度支払請求額を合わせた当該年度の所要額は1,174,185円。これに対する平成24年度の実支出は1,070,610円であり、次年度使用額として103,575円が生じた。これは学内業務との兼ね合いのため、一部の研究成果発表を海外で開催される国際会議から、国内の会議に変更したことによる旅費の残額によるものである。次年度使用額については、成果発表のための旅費として充当するとともに、当初計画では不足気味であったシリコン基板、薬品、水蒸気熱処理装置消耗品等の物品費、並びに実験補助の人件費・謝金として充当する。
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