研究課題/領域番号 |
23560371
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
脇田 和樹 千葉工業大学, 工学部, 教授 (80201151)
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研究分担者 |
三村 功次郎 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40305652)
沈 用球 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20336803)
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キーワード | 光第二高調波 / タリウム系化合物 / 構造相転移 / コメンシュレート相 / インコメンシュレート相 / TlInS2 / TlInSe2 |
研究概要 |
タリウム系化合物(TlMeX2:Me=In,Ga,X=S,Se,Te)はタリウムの変位によって空間変調構造を示す。そのため本研究では結晶構造の変化による中心対称性からの変位成分のみが信号として表れ、結晶構造の変位を高感度で検出できる光第二高調波発生 (Second Harmonic Generation : SHG) 法を用いることによって結晶構造の変化を観察し評価を試みた。 SHGは結晶対称性に依存する。ノーマル(N)相は中心対称性をもつためSHGは起こらないが、コメンシュレート(C)相または、インコメンシュレート(IC)相では非中心対称性であり、SHGが起こることが予想できる。 タリウム系化合物のSHGの温度特性についてTlInS2(層状)結晶、およびTlInSe2(針状)結晶の測定を行った。層状結晶のTlInS2は強誘電相である低温ではSHGの信号を観測することができるが、150K付近から温度が上昇すると急減して190K付近から常誘電相となり強い信号が観測できなくなる。この結果からC相からIC相への相転移温度は190K付近と考えられる。従って、第二高調波を用いることによりタリウム系層状結晶の構造相転移について高感度での観測が可能であることを示した。また、偏光特性についても評価した。 一方、針状結晶のTlInSe2のSHGの強度は低温から温度を上昇させていくと275K以降で急激に上昇している。しかし、これではノーマル相で光第二高調波を観測していることになる。この原因についてはTi:Sapphire laserの光により巨大表面形状変化が起きたことによる結晶構造の変化や新たな特性による可能性も考えられる。このことより、タリウム系針状結晶では既存のデータでは説明できない構造相転移について新たに発見したといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反射型の高感度である光第二高調波測定系を完成させシリコンなどでの検証実験にも行った。 そして、タリウム系化合物の構造相転移について、光第二高調波発生により高感度で検出することに成功している。また、層状結晶においては偏光特性による解析を行っている。一方、針状結晶においては新たな構造相転移現象を発見した。
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今後の研究の推進方策 |
タリウム系化合物(TlMeX2:Me=In,Ga,X=S,Se,Te)の他の層状結晶においても第二高調波検出により相転移現象についての詳細な解析を行うとともに、その構造について偏光特性を測定することにより解析を行う。 また、他のタリウム系材料も含め針状結晶での実験を詳細に行うことにより、ノーマル層でなぜ第二高調波が発生するかを明らかにする。 さらに、研究成果を国内外の会議で発表するとともに論文として出版し、さらにホームページにより研究成果を公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
タリウム系の材料の結晶成長や第二高調波測定系の高感度化のための装置の改善に消耗品費として使用する。 また、共同研究者との打ち合わせの旅費や実験補助の謝金として用いる。 さらに、国内外の会議において研究成果発表の旅費や会議登録料、論文投稿料として使用する。
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