研究概要 |
三元Tl系化合物TlMeX2(Me:Ga,In,X:S,Se,Te)は低次元構造をもち,電気特性,熱電特性に特異な特性を示すため大きな関心を集めている.加えて,この化合物の特性は温度変化によって強誘電相へ転移することを示しており,半導体材用への応用が期待されている.さらにTl系化合物の一つであるTlInSe2において光照射による光誘起メモリ効果,巨大体積膨張および室温での強大な音響パルス生成などが報告されている.しかし,これらの特性の起源は,まだ十分に明確にされていない. 光第二高調波発生(SHG)は中心対称性をもたない材料において起こるため,SHG法は結晶構造を評価するための有効な手法の一つである.TlInS2,TlGaSe2などの層状TlMeX2は室温において空間群C6,2h であり結晶構造は中心対称性をもつ.しかし,結晶構造の中心対称性は強誘電相転移の温度で著しく低下しており,強誘電相である空間群C3,2となったときに中心対称性は失われる.TlInSe2やTlGaTe2のような鎖状TlMeX2の場合はより複雑になる.室温での空間群はD18,4hであり室温付近の温度領域で相転移が起こる可能性はあるが,どちらも相転移の原因については,はっきりと解明されていない.これらのことから,SHGの温度依存性測定はTlMeX2の結晶構造の評価に有効であると考えられる. 今回はTlGaSe2の偏光特性から強誘電相(コメンシュレート相)における結晶構造について検討した.偏光特性の測定結果からコメンシュレート相では報告されている単斜晶系,結晶点群C3,2の計算結果とは異なる測定結果が確認された.以上よりTlGaSe2結晶は低温(77K)での相転移後,三斜晶系の結晶である可能性があると考えられることがわかった.
|