研究課題/領域番号 |
23560372
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
池田 正則 日本大学, 工学部, 准教授 (10222902)
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研究分担者 |
清水 博文 日本大学, 工学部, 教授 (10318371)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 表面光電圧 / 多結晶Si薄膜 / TFT / 結晶性評価 |
研究概要 |
本研究はボトムゲート型薄膜トランジスタ(TFT)に使われる多結晶Si薄膜の結晶性評価技術を確立する目的で行っている。平成23年度に行った研究の概要を以下に記述する。(1)表面光電圧(SPV)装置の高感度化,平面分解能の向上 SPV測定装置の高感度化を行うべく,キャリア励起光源を波長365nmの紫外発光ダイオード(LED)から波長379nmの紫外レーザダイオード(LD)へと変更した。この変更に伴い,SPVプローブを新たに作製した。LDへの変更により,照射光パワーは約160mWとLEDの場合に比べ約150倍となった。作製したSPVプローブを用いてトップゲート型構造試料(石英基板上に膜厚約50nmの多結晶Si薄膜が形成されたもの)の測定を行った結果,LED光源の場合と比較して大きいSPVが得られ,約7倍の高感度化が達成された。この事により,SPVの小さいボトムゲート構造試料への適用に大きく前進した。また,多結晶Si薄膜からのSPV波形はLED励起光を使用した際と同様であり,SPVは多結晶Si薄膜の結晶粒径に対応している事を確認した。新たに作製したSPVプローブには励起光の絞り(直径1mm~5mm)を取り付け,試料への照射光面積を可変できる形にした。しかしながら,SPVの平面分解能は励起光照射面積に依存せず,SPV信号を検出するITO薄膜電極面積に依存していることが判明した。今後,SPVプローブの検出部の変更により平面分解能の向上を目指していく。(2)試料の作製と評価 アモルファスSi薄膜の多結晶化条件,水素終端化条件によるSPVの違いについて検討を行うために,石英基板上へスパッタ法により約50nmのアモルファスSi薄膜を形成した試料を作製した。現在,多結晶化試料の評価中であり,その結果を基に,ボトムゲート構造試料の作製を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究はボトムゲート型薄膜トランジスタ(TFT)に使われる多結晶Si薄膜の結晶性評価技術を確立する目的で行っている。平成23年度の達成度について以下に記述する。平成23年度は,東日本大震災及び福島第1原子力発電所の事故により,装置の復旧や研究体制を整えるために時間がかかり,研究の進捗に遅れが生じた。(1)SPV装置の高感度化,平面分解能の向上 SPV信号の高感度化のため,LDを励起光源に用いたSPVプローブの作製を完了した。励起光源をLEDからLDに変更して照射光パワーを増大し,多結晶Si薄膜から得られるSPVについて約7倍の高感度化を達成した。また,新たに作製したSPVプローブにおいてもノイズレベルを低く抑制できている。平面分解能の向上については,SPV検出面積を変えずに励起光照射面積を縮小することで実現することを試みたが,大きな効果は得られなかった。SPV検出部となるITO膜のついた円柱形石英ブロックの小型化(SPV検出面積の縮小)は費用の都合で行うことができず,平面分解能の向上は今後の課題としている。(2)試料の作製と評価 当初,ボトムゲート構造試料の作製を行う予定であったが,より基本的な特性を検討するため,作製する試料の仕様を変更した。すなわち,アモルファスSi薄膜の多結晶化条件,水素終端化条件によるSPVへの影響を検討するための試料の作製を行った。本試料の評価は進行中であり,ボトムゲート型構造試料の作製は平成24年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度立ち上げた装置において,振動対策及び平面分解能向上のためのSPV検出部電極の縮小を行う。このため,装置を乗せる除震装置を購入する。また,SPVプローブは励起光源部とSPV検出部を一体化させたものであるが,それぞれ独自に変更できるよう設計しているため,SPV検出部電極の縮小は検出部部品の作製のみで対応できる。この改良は2012年6月をめどに行う予定である。 SPV評価は,(1)トップゲート型構造試料,(2)ボトムゲート型構造試料について行っていく。(1)トップゲート型構造試料の作製は昨年度行っており,現在,評価を行っている。多結晶化や表面水素終端化処理の装置は研究室に既存のものを使用できる。試料作製では,外部委託で行うことが研究の進捗を遅延させる原因となるため,昨年度からスパッタ装置の立ち上げを行っている。本装置が使用可能になれば,多結晶Si薄膜の膜厚など,様々な条件の試料作製が可能になる。今年度作製予定の(2)ボトムゲート型構造試料については,多結晶Si/SiO2/金属膜の3層構造となるため,外部委託で進める予定にしている。 多結晶Si薄膜の物性評価として,日本大学工学部の所有する電界放射走査型電子顕微鏡及びX線回折装置により結晶粒径評価及び結晶性評価を行っていく。この結果とSPV周波数依存性測定結果との相関を調べていく。 今年度より,池田,清水に加え,大学院生1名をメンバーとして研究を行っていく。池田は研究統括を行いつつ,大学院生とSPV装置の改良及びデータ解析を行っていく。清水は物性評価を担当する。また,大学院生にはSPV装置管理,測定及びデータまとめを行ってもらうことにしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度にSPV測定装置の高感度化を達成した。平成24年度は,平成23年度の研究で明らかになった装置の振動ノイズの解消,及び励起光照射面積縮小のための装置改修として約20万円を使用する。装置の改修後,アモルファスSi薄膜の多結晶化と水素終端化処理など表面処理を施した試料についての評価を行っていく。本処理を行う装置は既存のものが使用できる。この処理における雰囲気ガス購入のために20万円程度を使用する予定である。更に,ボトムゲート型構造試料の作製を行っていく。この試料の作製のため,研究費の半額程度(65万円)を使用する予定である。電界放射走査型電子顕微鏡及びX線回折装置による結晶性評価と表面光電圧周波数依存性測定結果との相関を調べ,多結晶シリコン薄膜内の少数キャリア挙動,表面水素終端化による表面電子状態について考察する。また,ボトムゲート型構造試料の測定結果と,すでに取得している下地金属膜のない構造の試料における測定結果との比較を行い,下地金属膜の影響を調べる。実験を行うための材料費,薬品代などの消耗品として15万円程度を考えている。また,これらの結果を論文として報告するために論文別刷り,英文添削代として10万円を予定している。
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