本研究は交流表面光電圧(AC SPV)法による多結晶シリコン(Si)薄膜の結晶性評価技術を確立することを目的としている。平成25年度に行った研究の概要を以下に記述する。 (1)Si薄膜形成用スパッタ装置の立ち上げ:Siをターゲットとした直流マグネトロンスパッタ装置を立ち上げた。Si製膜速度は約7nm/minであり,薄膜トランジスタにおけるSi薄膜の膜厚(約50nm)を考えると膜厚制御が難しいため,製膜条件の見直しを行っている。 (2)熱処理したアモルファスSi薄膜のAC SPV:作製した真空熱処理装置により実験を行い,熱処理温度とAC SPVの関係を得た。熱処理温度800℃においてAC SPVが最大となり,また,AC SPV減衰特性から得られた減衰時間も同様の結果を示した。一方,X線回折(XRD)測定では,結晶化による回折パターンは観察されなかった。これらの結果より,熱処理によるAC SPV及びその減衰時間の増大はSi薄膜における欠陥や未結合手に起因する再結合中心密度の減少によるものと考えられ,AC SPV法によりSi薄膜の膜質の定量的評価が出来る可能性を示した。 平成25年度の結果を含めた3年間での本研究の成果は以下のとおりである。①AC SPV法による多結晶Si薄膜の結晶性評価の高感度化及び低ノイズ化の達成,②AC SPV高感度化・平面分解能向上における問題点の抽出,③AC SPV法によるアモルファスSi薄膜における再結合中心密度評価の可能性 今後,Si薄膜の水素雰囲気中熱処理によるSi薄膜の再結合中心密度変化についてAC SPV評価を行っていく。また,Si薄膜作製についても引き続き実験を行い,ボトムゲート型構造試料の評価を行う予定である。
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