研究課題/領域番号 |
23560373
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
平井 直志 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (30329122)
|
研究分担者 |
大木 義路 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70103611)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 化学発光 / 酸化誘導時間 / 酸化防止剤 / 生分解性高分子 / 熱劣化 / カルボニル基 |
研究概要 |
高分子では酸化が進行すると生成されることが知られているカルボニル基は、短波長域にピークを持つ化学発光(CL)スペクトルを示す。高分子は、製造段階から既に酸化が進行すると言われ、種々の添加剤により酸化の進行を抑制している。つまり高分子の酸化機構を解明する上では、酸化防止剤等の添加剤の高分子中における挙動を把握することが重要である。化学構造が簡単な低密度ポリエチレン(LDPE)に種々の酸化防止剤を添加し、酸化誘導時間(OIT)やその前後のCLスペクトルを測定した結果、CL発光の有無、OITに差があることが明らかとなった。一般に製造されている生分解性高分子においても同様に、種々の添加剤が含まれている。このため、まず前述のLDPEをベース材料として、酸化防止剤や架橋剤等の添加剤がOITおよびCLスペクトルに与える影響を測定した。LDPEにシラン架橋剤と添加量の異なるチオビス系酸化防止剤を添加した結果、OITは酸化防止剤添加量に相関して長くなり、シラン架橋剤およびチオビス系酸化防止剤は固有のCLピークを示さないことがわかった。また、同量の酸化防止剤を添加した架橋ポリエチレン(XLPE)では、OITはLDPE同様に酸化防止剤の添加量に相関して長くなるが、同量の酸化防止剤を含むLDPEより短いことがわかった。関連して、添加剤が実用量配合されたXLPEをCL測定前にある時間加熱した場合、加熱時間が長くなるとOITは短くなり、事前加熱時間とCL測定時間の和が、事前加熱していないXLPEのOIT以上になる場合には、CL測定において明確なOITを示さないことがわかった。つまり、OITは酸化防止剤の添加量に正に相関するだけで無く、事前熱劣化時間には負に相関することがわかった。これは、CL測定が高分子の酸化度評価法として適用できることを示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全ての高分子には酸化防止剤などの添加剤が含まれている。生分解性高分子にも添加剤は含まれている。CL測定により生分解性高分子の劣化評価を行うためには、添加剤のみのCL挙動を測定することが重要であるため、構造の簡単な汎用高分子であるLDPEを用い、各種添加剤、添加量、事前加熱がCLスペクトルに与える影響を測定した。結果として、加熱による酸化度をCL測定により評価すること、各種添加剤の加熱時のCLスペクトル挙動を把握することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
熱重量(TG)測定により、CL測定で得たOITと添加剤等の揮発開始した時間を比較し、高分子および生分解性高分子の酸化進行における添加剤の挙動を明確にする。試料として、ポリ乳酸(PLLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)と、一般的な高分子である低密度ポリエチレン(LDPE)を使用する。熱重量測定(TG)装置により、各試料の酸化誘導期間(OIT)の温度依存性を測定し、CL測定において得られたOITとTG測定で重量が変化した時間との相関を調べる。各生分解性高分子とLDPEの混合比を変化させながらブレンドした試料について、FT-IR、PL、UV吸収測定により、エステル結合中のC=O基の量を測定する。ブレンド試料の酸化誘導期間における化学発光スペクトル測定により、エステル結合中のC=O基の発光スペクトルの同定を試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
熱重量(TG)測定装置を購入し、CL測定と同じ温度における試料の重量変化を測定する。CL測定において得られたOITとTG測定で重量が変化した時間との相関を調べる。これにより、高分子の酸化機構に与える添加剤の影響を明らかとする。また、走査型プローブ顕微鏡(SPM)による表面構造観察により添加剤の分布を測定し、添加剤揮散、重量変化、表面観察等を総合的に評価することで、添加剤の酸化機構に与える影響を明らかとする。主な消耗品としてはSPMの探針、CL試料台等を購入する。
|