研究課題/領域番号 |
23560373
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
平井 直志 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (30329122)
|
研究分担者 |
大木 義路 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70103611)
|
キーワード | 化学発光 / 酸化誘導期間 / 添加剤 / 生分解性高分子 / カルボニル基 / 走査型プローブ顕微鏡 |
研究概要 |
環境対応型絶縁材料として有望な生分解性高分子の酸化劣化評価は、実用化において非常に重要である。そこで、高分子の酸化評価に有用な手法である化学発光測定により、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタラートの5種の生分解性高分子と比較試料として低密度ポリエチレンの酸化過程を調べた。この結果、酸化開始後の発光スペクトル挙動は全ての試料で同様の傾向を示した。以上より、生分解性高分子の酸化進行過程は汎用高分子と同様であり、化学発光測定が生分解性高分子においても酸化評価手法として適用可能であることを確認した。 難燃エチレンプロピレンゴム(FR-EPR)について、化学発光(CL)を測定したところ、他の多くの高分子には見られない特異なCL挙動を示すことが分かった。すなわち,180℃の加熱開始と同時に、CLは大きな強度で始まり単調に減少したあとピークを示す。この後者のピークが酸化誘導期間(OIT)であると仮定すると、OIT以前には発光しない生分解性高分子や汎用高分子のポリエチレンなどと比べ、対称的なCL挙動である。OIT以前の発光は,試料に含まれる難燃剤等に起因する可能性が考えられるが、今後の検証が必要である。 さらに劣化進行過程における試料表面の状態を走査型プローブ顕微鏡(SPM)により観察した。具体的には難燃エチレンプロピレンゴムに熱・放射線同時劣化を施し,表面状態をSPMにおけるタッピングモードで観測した。その結果,粗さの変化は少ないが,表面は硬化していることがわかった。さらに,FT-IR-ATR測定により,表面の硬化は多重結合の増加に起因しており,酸化はほとんど進行していないことがわかった。また,熱劣化した架橋ポリエチレンと比較することにより,両者の劣化形態の差をミクロに捉えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生分解性高分子の酸化進行過程は汎用高分子と同様であり、化学発光測定が生分解性高分子においても酸化評価手法として適用可能であることを確認した。さらに、これまで添加剤由来の化学発光は殆ど報告されていないが、難燃剤由来の化学発光の可能性を確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで酸化防止剤等の添加剤も化学発光すると予想されていたにも拘わらずその発光を測定した報告は殆ど無い。難燃剤の化学発光の可能性を示唆する結果を得られたことより、種々の難燃剤を添加した試料について、難燃剤の発光の可能性を検証し、さらに発光種となる化学構造の特定に努める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
化学発光測定と走査型プローブ顕微鏡(SPM)による表面構造観察により添加剤の分布を測定し、添加剤揮散、表面観察等を総合的に評価することで、添加剤の化学発光および酸化機構に与える影響を明らかとする。主な消耗品としてはSPMの探針、CL試料台等を購入する。
|