研究概要 |
本年度ではその前年度に導入したエアロゾルデポジッション(AD)装置を用いて燃料電池形成に必要な固体電解質膜及び空気極の形成を行うことを目的とした.固体電解質にはYドープしたSrZrO3(SZYO)を,空気極には(La,Sr)(Co,Fe)O3(LSCF)の酸化物を選択し,AD法を用いて多孔質ステンレス基板上に成膜をおこなった.その結果LSCFに関しては緻密な薄膜の形成が確認されたが,固体電解質膜(SZYO)の形成は確認されなかった.この原因を探るため両者の粒形を電子顕微鏡で観察したところ,LSCFの粒径が数十μmのところSZYO用の粒径は0.1μm以下と極めて小さく,これが原因で膜の形成ができなかったものと推定された.そのためより大きな粒径を持つSZYO原料を入手し実験を行ったところ薄膜の形成が確認された.これによりSOFCの主要部分である膜-電極接合体の形成が可能であることを見出した. しかしながら,実際にSOFCセル構造を作製したところ,電極間に電気的なショートが確認され,発電特性の検証には至らなかった.これは,セルを形成する際にハンドリングの不手際から薄膜に欠陥が生じてしまい,結果的に電極間がショートしてしまったものと考えられる.また,ステンレス基板と酸化物薄膜との間の熱膨張係数の差から,プロセス時の熱により薄膜に応力が加わりその結果欠陥の発生につながった可能性がある.これを避けるためにはセル形成時により欠陥の発生が抑えられるようなハンドリング手法を確立するとともに熱膨張係数をできるだけ酸化物のものにあわせた基板を選定する必要がある.
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