本研究は、半導体である金属フリーシリコン(Si)クラスレート化合物の合成プロセスを確立させ、その化合物の物性を測定し、熱電変換材料としての応用の可能性を見出すことを目的とする。得られた実積は以下の通りである。 ①(希ガス混合Si薄膜の合成)希ガスをチャンバ内に導入しSiをターゲットにしてスパッタリングすることで希ガス Si 化 合物を合成した。希ガスにKrを用いた場合Kr/Si比はEDXの測定により最大18%以上の混合比の薄膜が合成できた。また、低温合成によりKr/Si比の向上を目指したが実現できなかった。さらに、イオン注入法によりSiウエハにXeイオンを注入してXe/Si比が最大18%の薄膜(層)が合成できた。 ②(希ガス混合薄膜のアニール処理)Si(100)面のウエハに合成したXeSi混合薄膜について次の結果が得られた。(1) 真空中で500℃、100時間のアニール処理を行なうとSi(111)の回折ピークが現れた。これはアモルファスであったXeSi混合層が結晶化し多結晶になったためと考えられる。Xeの含有量はアニールより約1/100減少していた。したがって結晶化が進んだのはXeが熱拡散したためである。(2) 100気圧で530℃、200時間のアニールを行なった場合、XRDでは多結晶化による回折ピークは観測されなかった。また、EDXによる測定でもXeの減少は観測されなかった。すなわち圧力によりXeの熱拡散が阻害できることが確認できた。しかしながらSiネットワークがクラスレートに変化することは確認できない。これはクラスレートに転移するためのエネルギーポテンシャルが高いためである。
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