ITER 核融合実験炉での採用が決定しているNb3Sn 線材は、ひずみ感受性が高くより大きな電磁力にさらされる実証炉ではもはや対応できないと言われている。一方同じA15 型結晶構造でありながらNb3Al 線材の耐ひずみ特性は格段に優れ、0.4%のひずみに対しNb3Sn線材の電流輸送特性が30%以上低下するのに対しNb3Al では低下は約10%である。その要因には化学量論性の違い、結晶粒間のコネクティビティーなどが考えられているが、明確な結論はまだ出ていない。そこで本研究ではひずみ特性の優れたNb3Al 線材の化学量論性・ナノレベルの微細組織を詳細に調査し、次世代の高耐ひずみ超伝導線材の開発につながる新しい知見を求めることを目的とする。 本年度は急熱急冷条件、Nb-Al 過飽和固溶体相への塑性加工条件、Nb3Al相変態熱処理条件を制御して、結晶粒サイズや組成ゆらぎ、板状欠陥密度を変化させた各種線材の磁束ピンニング特性を測定した。これらの結果を透過電子顕微鏡(TEM)によるナノレベル組織観察結果と合わせ、組織と磁束ピンニング機構の関連性を調べた。 その結果、低磁界磁束ピンニングが著しく低い試料において、欠陥の間隔がこれまでの約20nmから100nm程度に増加した低欠陥密度領域が広範囲で存在することが確認された。高磁界特性の優れる線材の場合と同様に、板状欠陥密度の減少が磁束ピンニング機構に深く関わっていることが明らかとなった。
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