研究課題/領域番号 |
23560380
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
色川 芳宏 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (90394832)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 窒化アルミニウム |
研究概要 |
本研究は、水素と窒化物半導体デバイスとの相互作用機構の解明を通して耐環境性水素ガスセンサーの開発を行うと同時に、高温デバイス物理の基礎的知見を体系化して、窒化物半導体電子・光デバイスの信頼性の問題に貢献することを目的としている。まず、評価用チャンバーに加熱機構の取り付けを行い、300℃まで問題なく加熱可能であることを確認した。次に、窒化物半導体の加熱による電気的特性変化を調べる目的でAlNショットキーダイオードを作製して電流-電圧-温度特性を調べた。近年、エネルギー消費の効率化が強く求められており、各種インバーター等で用いられるパワーデバイスの高効率化が積極的に試みられている。パワーデバイスの材料としては、従来、Siが用いられてきた。しかし、その性能は理論限界に近づきつつあり、デバイス性能向上のためには、より低損失な材料が必要とされる。理論的に、材料のバンドギャップが大きい程、材料における損失が少なくなることから、Siの数倍のバンドギャップを持つSiCやGaNなどを用いたデバイスが現在、研究開発されている。今回着目したAlNは6.2eVのバンドギャップを持ち、この値は半導体材料としては最も大きい値の一つとして知られている。ゆえに、AlNは、理論的には超低損失材料となることが期待されるが、材料作製が困難であり、従来、パワーデバイス材料としては着目されていなかった。今回、育成した基板上にショットキーダイオードの作製・評価を行った。作製したダイオードは良好な整流性を示し、-40Vにおいて0.1nAと小さい漏れ電流であった。作製したデバイスは300℃においても安定に動作することを確認した。また、逆方向にトンネル性のリーク電流が見られ、結晶欠陥が関係していると考えられる。材料の結晶性を向上させるとともに、ドーピングによって電気伝導度を制御することが重要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は装置作製(加熱機構の組み付け)および窒化物半導体(AlN)デバイスの加熱による電気的特性変化を調べることは遂行できたものの、相当な時間を取られてしまい、予定されていた水素と半導体デバイスとの相互作用については調べることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は水素と窒化物半導体デバイスとの相互作用について調べる。具体的には、(1)界面挿入層の影響、(2)界面準位の影響、(3)結晶極性、に着目して試料温度を関数にとり、幅広い周波数において電気的特性をモニターすることによって水素とデバイスとの相互作用を調べる。また、水素以外のガスとの相互作用について調べることによって、デバイスの水素に対する選択性を実現する。また、デバイス動作温度および動作環境ガスの変化に対するデバイス特性変化を解析することによって、窒化物半導体デバイス全般の信頼性向上に関する知見を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定されている研究費164万円において、基板・電極金属などのデバイス作製に必要な材料経費を80万円、フォトマスクを50万円計上する。残金の34万円は、研究成果発表に伴う論文投稿および学会参加に費やす。
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