研究課題/領域番号 |
23560380
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
色川 芳宏 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (90394832)
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キーワード | 水素 |
研究概要 |
本研究は、水素と窒化物半導体デバイスとの相互作用機構の解明を通して耐環境性水素ガスセンサーの開発を行うことを目的としている。このうち、水素と半導体デバイスとの相互作用については、古くから研究されているにもかかわらず、明確なメカニズムは未だ明らかにされていない。電極金属を介して電極金属/半導体界面まで浸透した水素が、界面で電気二重層を形成するためにデバイスの電気的特性に変化が生じる、というモデルが提案されているものの、詳細については明らかにされていない。これまでの研究において、デバイスの電極金属/半導体界面に存在する絶縁膜が水素との相互作用の本質的な役割を担っていることが明らかになっているが、この電極金属/絶縁膜/半導体界面において水素がどのような振る舞いをするかはわかっていない。そこで、本年度の研究では、デバイスを水素雰囲気下においた時の絶縁膜/半導体界面の状態変化を電気的手法で調べた。その結果、絶縁膜としてSiO2を用いた場合、室温においてでさえも、窒素雰囲気下で伝導体から0.4eV下のエネルギー準位において~8x1011 cm-2 eV-1であった界面準位密度が、水素雰囲気下では1010 cm-2 eV-1台前半まで低下することが明らかになった。逆に、絶縁膜としてSixNyを用いた場合、水素導入前後において界面準位密度に変化がないことも確認された。以上の結果から、絶縁膜としてSiO2を用いた場合、界面準位密度が大きく低減しており、原子状の水素がSiO2/GaN界面において、Siのダングリングボンドと結合することによって界面準位密度が低減していることが予想される。これは、絶縁膜/半導体界面において原子状水素の存在を示唆する初めての報告であり、SiO2/GaN界面を持つ電子素子の特性向上にも役立つ結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は絶縁膜-半導体界面準位に着目した際の水素と半導体デバイスとの相互作用についてはある程度調べることができたものの、実際のガスセンサーデバイス特性と水素-デバイスの相互作用機構との関連については未だに明らかにできていない点が多い。
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今後の研究の推進方策 |
今後は水素と窒化物半導体デバイスとの相互作用について調べる。具体的には、(1)界面挿入層の影響、(2)結晶極性、に着目して試料温度を関数にとり、幅広い周波数において電気的特性をモニターすることによって水素とデバイスとの相互作用を調べる。また、水素以外のガスとの相互作用について調べることによって、デバイスの水素に対する選択性を実現する。また、デバイス動作温度および動作環境ガスの変化に対するデバイス特性変化を解析することによって、窒化物半導体デバイス全般の信頼性向上に関する知見を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定されている研究費230万円において、基板・結晶成長・電極金属などのデバイス作製に必要な材料経費を100万円、フォトマスクを80万円計上する。残金の50万円は、研究成果発表に伴う論文投稿および学会参加に費やす。
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