研究課題/領域番号 |
23560381
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
立木 隆 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 電気情報学群, 准教授 (60531796)
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研究分担者 |
内田 貴司 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 電気情報学群, 教授 (50531802)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 酸化物高温超伝導体 / ジョセフソン接合 / テラヘルツ波 / 発振素子 |
研究概要 |
研究目的である固有ジョセフソン接合を用いた完全薄膜型テラヘルツ波発振素子の製作および高性能化を実現するには、いくつかの要素技術の確立が重要になる。そのため、当該年度では、以下の段階の研究を遂行した。 1.金薄膜を用いた薄膜アンテナの設計および試作・・・発振素子の放射効率を向上させる薄膜アンテナの一つとして、比較的広帯域な周波数特性をもつスパイラルアンテナを選定し、設計・試作した。アンテナパターンと帯域特性およびアンテナの土台(基板)の影響を数値シミュレーションと実験により議論し、それらの良い一致が得られた。 2.ニオブ系ジョセフソン接合を用いたプロトタイプの試作・・・ビスマス系高温超伝導薄膜を用いた素子製作に先立ち、従来超伝導体であるニオブ系ジョセフソン接合を用いた素子の製作を試みた。まず、接合製作に適した20ナノメートル程度の極薄のニオブ薄膜を作製した。つぎに接合製作に向けてニオブ薄膜上に電子ビーム描画装置によりナノ構造のパターンを形成させた。これにより、薄膜アンテナとの結合に適したジョセフソン接合を製作できる手がかりを得た。 3.テラヘルツ波放射特性の評価システムの構築・・・光学の知識をもつ大学院生が入学したため、当初、平成25年度に予定していた放射特性の測定システムの構築を先行して行うこととした。既存の光学素子と検出素子(低温シリコンボロメータ)および自作した干渉計によりフーリエ変換赤外分光光度計を構築した。本測定システムは、測定周波数範囲が数十GHz~3THz、周波数分解能6GHzの性能を示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薄膜アンテナなどの外部回路のデバイス設計に関しては、設計、試作、評価の段階まで達成できている。 一方、プロトタイプであるニオブ系ジョセフソン接合を用いた素子の試作に関しては、接合の完成の一歩手前まで進展しているものの、当該年度中に行う予定よりも若干の遅れが生じている。しかしながら、接合製作の条件出しが短期に終了する見通しがある。 また、予定を前倒しして行ったテラヘルツ波測定システムの構築により、本研究課題の目的であるテラヘルツ波発振素子の性能を十分評価できると環境が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に引き続き、薄膜アンテナなどの外部回路およびニオブ系ジョセフソン接合を用いた素子に関して、製作と評価を中心に研究を継続する。 次に、ビスマス系高温超伝導薄膜をテラヘルツ波発振素子へ応用する際の問題点は、結晶粒が数ミクロンと小さいことにある。次年度は、新たに、薄膜と基板の間で格子整合させるためのバッファ層(酸化セリウム)を導入し、超伝導薄膜の大粒径化を目指す。 また、先行して行っているテラヘルツ波測定システムの性能評価として、まずはバルク体のビスマス系高温超伝導体による固有ジョセフソン接合を用いた発振素子の特性評価を行う。この素子は薄膜型とは異なり、外部回路との結合は難しいため、発振強度は1マイクロワット程度と小さいものの、測定システムの評価および発振素子の物理現象の理解に役立てられると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度に購入を予定していた膜厚計は、薄膜作製を次年度に行うこととなったため、次年度以降に購入を遅らせることとした。また、これに伴って、基板材料と真空部品の購入が少量となった。 次年度は、超伝導薄膜の大粒径化の研究を行うため、基板材料と真空部品の購入を増やす予定である。さらにプロトタイプ試作のための電子ビーム用レジストの購入に充てることとする。また、当該年度に挙げられた薄膜アンテナおよびテラヘルツ波測定システムに関する成果2件を「ミリ波と赤外およびテラヘルツ波に関する国際会議」で発表するため、その旅費として本助成金を使用する予定である。
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