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2011 年度 実施状況報告書

低消費電力スピン制御デバイス用低スピンダンピング磁性材料の探索

研究課題

研究課題/領域番号 23560384
研究機関山形大学

研究代表者

高橋 豊  山形大学, 理工学研究科, 准教授 (00260456)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードスピントロニクス / 磁気記録 / 強磁性共鳴測定 / 磁気緩和係数 / 3d遷移金属 / RFマグネトロンスパッタリング
研究概要

磁性薄膜の磁気緩和係数(Gilbert damping constant)の大きさを決める物理的メカニズムを明らかにするために、典型的な3d遷移金属であるFe薄膜に同じ3d遷移金属であるCoを微量添加して磁気緩和係数の組成依存を測定した。(1) 試料作製:GaAs(001)面上にRFマグネトロンスパッター法によりFe(1-x)Co(x)薄膜(0<x<0.11)を作製した。薄膜へのX線回折で(002)面からの回折ピークが確認される事とVSM測定での明瞭な磁気異方性からエピタキシャル成長していると判断される。(2)磁気特性:VSMによる磁化測定を行い飽和磁化と面内の磁気異方性を測定した。Slater-Pauling曲線から期待されるように、Coの組成が11 at%まで増加するにしたがって飽和磁化の大きさは増加していく傾向が見られた。しかしその絶対値はバルクで報告されている値より10%程度小さい。磁気異方性は[100]方向を容易軸とする面内4回対称を示しており、Co組成が小さい薄膜では微小な一軸異方性が重畳されている。(3)磁気緩和係数:Qバンド(35GHz)用キャビティーを使った通常の強磁性共鳴(FMR)により面内に磁場を印加した場合における共鳴スペクトルを室温で測定し、共鳴線幅より磁気緩和係数を求めた。これはCo組成に依存して増大する傾向を示し、Feの0.004からFe(0.89)Co(0.11)での0.008まで上昇する。理論的に磁気緩和係数はTorque Correlation modelで説明されると考えられており、室温付近では電子の並進運動の運動量緩和時間(散乱時間)に反比例する。Co原子がランダムな位置に微量添加されたために電子の散乱頻度が上昇して、これが磁気緩和係数の増加につながったと考えることができるが、これを確認するために他の材料での測定が必要と考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

東日本大震災により実験装置が一時停止し、研究の開始が2が月程度遅れ、さらに夏季に電力供給の不安定が懸念されたため実験装置を停止せざるを得ない時期が生じ、当初の研究計画から遅れが生じている。Feにいくつかの種類の3d遷移金属を添加した場合について試料を作成して測定を行う予定であったが、本年度はCoの添加のみを行った。

今後の研究の推進方策

2011年度ではFeにCoを微量添加した薄膜で磁気特性の測定を行い磁気緩和係数の増大が測定されたが、このメカニズムを明らかにするために2012年度は(1)FeCo系で成膜温度・成膜後のアニーリングが磁気緩和に及ぼす効果を調べる。電子散乱頻度が磁気緩和時間に影響を及ぼしているのであればアニーリングによりCo原子の配置、結晶状態が変化することにより磁気緩和時間も変化することが考えられる。(2)Feに他の3d遷移金属を添加した際の磁気緩和の変化を測定する。添加する元素の種類・磁気特性(磁性、非磁性、スピン軌道相互作用の大きさ)と磁気緩和との関連を分析することにより、磁気緩和を決定しているメカニズムへの知見を得る。更に実際に素子が稼働している状況を想定し、電流が流れている条件下で磁気緩和がどのように変化するかを測定する。

次年度の研究費の使用計画

2011年度の直接経費交付額は2,100,000円で、研究遂行に必要な装置等を購入した。購入物品の価格に若干の変動が起きたために、最終的に18,645円が次年度使用額となった。次年度は真空ポンプステーション、スパッターリング用ターゲット、偏光素子等を購入する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2011 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Q-Band Ferromagnetic Resonance Study of Fe Thin Films on GaAs(001) Deposited by RF Magnetron Sputtering2011

    • 著者名/発表者名
      Yutaka Takahashi
    • 雑誌名

      IEEE Transactions on Magnetics

      巻: 47 ページ: 4682-4685

    • DOI

      10.1109/TMAG.2011.2158847

    • 査読あり
  • [学会発表] RFスパッター法によるGaAs(001)上への微量Co添加Fe薄膜成長2011

    • 著者名/発表者名
      和田裕也
    • 学会等名
      応用物理学会東北支部第66回学術講演会
    • 発表場所
      いわて県民情報交流センター
    • 年月日
      2011年12月1日
  • [備考]

    • URL

      http://takahashilab.yz.yamagata-u.ac.jp/

URL: 

公開日: 2013-07-10  

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